■「ジョブ型」という労働形態について

1 在宅勤務とジョブ型

最近、ジョブ型という言葉が出てきています。さまざまな方が色々な言い方で語っているようにも感じました。私が見た限り、「大前研一・ニュースの視点」での指摘が一番明確だったように思います。7月17日に富士通の事例を上げて書いていました。

これは私の知らない世界の話でした。現在問題になっていることは知っておりますが、ジョブ型との関係が、こちらの知るところと、どうも違うのです。残念ながら、富士通という会社について、私は特別知っているわけではありませんから仕方ありません。

まず大前研一が富士通に関連して語っていることを引いておきます。[国内で働く全社員8万5000人を対象に在宅勤務を推奨し]、今後[勤務時間や評価など新たな人事制度作りも進めるということ]です。ここでジョブ型の話が出てきます。

大前は言います。[在宅勤務を前提とする新たな人事制度を作る際、「ジョブ型」の契約書を作るということが大前提であり必須]だが、日本には[「ジョブ」を定義できる人が
ほとんどいない]ので、[多くの日本企業が苦戦すると私は思います]ということです。

ここまでの話は明確です。「在宅勤務にするトレンドがある、それをすすめようとしても、日本ではうまくいかないだろう。なぜならジョブ型の仕事にしなくてはいけないからだ、そして日本の場合、ジョブを定義できないからだ」…こんな感じでしょう。

 

2 ジョブ型の仕事の定義

ジョブ型についても、大前の説明がわかりやすいのです。[ジョブ型の契約で採用する場合には、「仕事内容」「能力」「経験」「達成度合い」「それぞれに応じた年俸」などを明確に定義する]ことになります。事前に仕事が定義されていて、明確なのです。

仕事を定義して、こうした仕事がどのレベルでできるかが評価されて、その評価に従って、仕事を依頼する形式になっているということでしょう。大前の言う通り、普通の日本の会社で、こういう形式の労働がなされているわけではありません。

当然、予想されることがあります。[今採用されている人たちは「ジョブ型」として採用されたわけではないでしょうから、急に「ジョブ型に変更する」と言われても、受け入れるのは難しい]ということです。ここまでは、非常に明確なお話でした。

では、[勤務時間や評価など新たな人事制度]はジョブ型にすることが[大前提であり必須]であるのでしょうか。大前の出している例が、[富士通でも日立でも在宅勤務に移行する方針とのことですが]とのこと。日立についても、特別に知ることがありません。

そうなると、やはり大前とは別の世界があるのかもしれません。巨大企業ではない会社に関して、私が見た範囲で間違いないと言えることは、大前の言うようなジョブ型の仕事にしようと考えているところはないということです。意識の違いかもしれません。

 

3 ジョブ型とは別の流れ

大企業の場合、ジョブ型を意識しているかもしれません。しかし、もう少し規模が小さな会社では、完全なる在宅勤務にするつもりはないように思います。在宅勤務を増やすだけで、大きな変革になるというお考えのように感じました。遅れた考えなのでしょうか。

これから伸びていきそうな会社でも、ジョブ型を意識している感じがしないのです。私も、こんな話をするのです。学校で学ぶということは、授業で学ぶことだけではないですよね、ジョブ型というのとは、ちょっと違う道があるかもしれませんね…と。

こんな話になると、話が先に進む前に、ジョブ型ってなんですかと聞かれることがあります。この種のお話をあちこちでしているわけではありませんから、狭い範囲での経験ですが、ジョブ型というものに対しての意識は、この程度だという気がするのです。

大前が言う通り、日本には[「ジョブ」を定義できる人がほとんどいない]でしょう。たぶんジョブ型と言われても、感覚的にわからないはずです。今回の在宅勤務の推進を、ジョブ型の仕事のありがたと結びつけるのは無理があるように感じます。

たぶんジョブ型に対して、経営側もあんまりしっくりしていないはずです。巨大企業が先導役になって、日本の労働体制が大きく変わることはあると思います。在宅勤務が増えることも確実でしょう。しかしそれはジョブ型とは別の流れだろうということです。

 

 

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