■ブランド化の傾向について:その3


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7 ユニクロはブランドか?

ブランドという言い方は、概念があいまいなままです。アマゾン(Amazon)はブランドですかと聞いてみれば、答はまちまちになります。ブランドですという答えが出るのも当然でしょう。アマゾンというブランドがあるのは間違いありません。

ただ現時点では、どうしても欲しいアマゾンオリジナルのモノがあるからとか、アマゾンブランドの魅力でその製品を買っているのではなさそうです。その意味では、アマゾンがブランドですかと聞かれたら、ブランドではないという答えになるでしょう。

ブランドであるから勝つとか勝たないとか、そういうことでもなさそうです。アマゾンは便利ですし、そのビジネスモデルはオリジナルで跳び抜けていることは間違いありません。勝っているビジネスだからブランドになるわけではないのです。

あるいはユニクロはブランドでしょうか。これも微妙です。ユニクロの製品をずっと愛用していますし、知らないうちに自分にとっての定番になっています。しかしブランドですかと聞かれると、いままで使ってきた「ブランド」の概念とは違う気がするのです。

ここで語るべきブランドの概念はどんなものなのか。おそらく業務とのかかわりがポイントになるだろうと感じます。どんなふうに業務と関わっているのかが問題です。なぜユニクロのことをブランドと感じないのか、その辺がヒントになるように思います。

 

8 採寸の方法

たとえばオーダーメイドの服を作ろうとすると、きちんとした採寸が必要となります。採寸する人のスキルをあげてもらって、その人に合った服を作っていく方法が一般的でしょう。そのためには業務の中に、採寸のスキルを身につけていくプログラムが必要です。

しかしユニクロはおそらく違う方向に行くのでしょう。採寸のスキルを上げるために研修をきっちりやって、レベルの高い服を作るという方向には進みそうにありません。自動採寸の機械を導入して、短時間で正確な採寸ができるシステム作りを狙うはずです。

人間がやってきたものを、機械が代行するだけでなくて、人間よりも便利な方式を作り上げるということが狙いのように思います。これはアマゾンでも同じだと思います。効率的で、合理的な価格での提供につながるでしょう。価格破壊になるはずです。

ところがドレスに関わる人に聞いてみたら、そんなに簡単にいかないと思うということでした。当分の間、人がきちんと採寸して、その人に合わせた服を作っていくことになるようです。たんなる採寸だけではない要素があるということのようでした。

そういえばZOZOスーツが話題になったときに、まっ先に否定的なコメントをしたのがユニクロの柳井社長でした。もしかしたら、自分達が世界中をくまなく調査していたのかもしれません。それで、まだだとわかっていたのではないかという気がしてきます。

 

9 北イタリアのブランドビジネス

小林元の『イタリア式ブランドビジネスの育て方』は2007年に出た本です。北イタリアのブランドの育て方は、日本でも大いに学ぶところがあると思ってきました。ここで語られていることが、少しずつ日本化されながら、徐々に受け入れられている気がします。

小林は言います。[イタリア人の中で生活して感じたのは、彼らは「人間の手作業が最高の価値を生み出す」という固い信念をもっていることである](p.95)。これが北イタリアのブランドの基礎になっています。職人技が問われるということです。

イタリア人たちが言ったそうです。[ヨーロッパには、よいモノには高い価格を払ってくれる人々がいるのです](p.95)。こうした人をターゲットにする場合、大量販売にはなりません。その代わり、ブランドを作っていくことになります。

▼家族でコントロールできる企業規模(たとえば従業員を500人程度)まで行くと、それ以上大きくしたがらない例が多くみられる。
それを超えて大きな売り上げ、例えば年商1千億円を超える規模になっても、株式上場やM&Aの星の降るほどある誘いにも頑として首を振らないアルマーニのようなオーナーが何人もいる。 p.60

[“お金をもってくる人には誰にでも売る、そして大量に売るのがいいことだ”というのはアメリカ流の汎用品販売のビジネスモデル]です。イタリアのイガント社(後のアルカンターラ社)の販売戦略では[限定した層に販売する]方針をとりました(p.69)。

日本の町の「ブランド店」の狙いは少し違うでしょう。ほとんどの企業が、もう少し一般的なものを考えていると思います。しかし職人技が活きる仕事をしていこうとする傾向が強くなっているように見えます。仕事の高度化、スキルの重視ということです。

つねに伝統を新しくしていくこと、変らないようにするために変えていく方式が、だんだん力をもち始めているというのが最近の観察から感じてきた確信です。自分たちの仕事全体で、どうありたいのかというイメージが問われているということになります。

案外、マネジメントの原点に関わるものだという気がします。自分たちは、どういう存在であるとお客様に思ってもらいたいのか、それを明確にするということです。ミッションを明確にするときの選択肢として、ブランド化というのは一つのあり方でしょう。

業務を全体としてどう構築するか、これは案外めんどうで、難しいことです。たぶん日本の組織は、かなり不得意としているように思います。それは研修をやってみて、つくづく感じるところです。当然のことですが、訓練の仕方があります。

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