■「ひらがな」で考えるマネジメントの基本:人材と成果について その3


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7 就職先の探し方

学生が就職先を決めるときに、どういう会社のどんな部門の仕事をしたいのかは、わりあい自分で決められます。しかし、そこで働く人たちが、どんな仕事ぶりなのか、なかなかわかりません。そのとき、HPと説明会をよく見てくるように言います。

どんな仕事をする組織であるかがわかるなら、賛同できるかどうかわかるはずです。ミッションが明確であるかどうか、自分達はこういう会社だと説明しているかどうか、そのつもりで探してみると、だんだんわかってきます。地味でもわかるものです。

ミッションが明確ならば、その先もたいてい明確です。どういう仕事をすることで、ミッションを実現しようとするのかが見えてくるかどうかをたしかめていけば、学生たちもわかってきます。ここはこういうふうに仕事をするということかが見えてくれば安心です。

どんな仕事をする組織で、どんな仕組みで仕事をしているのかがわかれば、あとは相性とか感覚が大切になってきます。その組織、その職場で自分はやって行けるかどうかが大切です。それは社員さんの姿を実際に見たり、話したりすることで、かなりわかります。

こうやって、学生と協力して、まだ小さかった会社で発展しそうな会社を何社か発見してきました。職場で自分の居場所を確立して、一生懸命働けば、そう簡単に仕事をやめたりはしません。入口で間違うと、それは辛いのです。私が乗り出した原因はそれでした。

 

8 リーダーが整備すべき事柄

人事の方とお話したときに、自分の会社のHPがどうなっているか、きちんとミッションにあたるものが掲げられているのか、確認していますかと聞いてみることがあります。人事の方であっても、あまり丁寧にHPを見ていないことがあるのです。

何人かの方は、採用の画面以外、全くタッチしていないというお話をなさっていました。自社のHPをきちんと見た方のなかに、このHPでは自分たちの会社がどういう会社であるのかがわかりにくいという感想をお持ちの方が必ずいらっしゃいます。

組織自身がどういう存在でありたいということを明確にしているならば、特別に意識しなくても、普通に作られたHPで伝わります。仕事の仕組みも、標準化されていて効率的であることを示すとともに、自由な権限領域が示されていれば十分でしょう。

これらの整備はマネジメントの基本というべきものです。組織の大きい小さいとは関係なしに、成果を上げるために必要なものだろうと思います。逆に、それを見出して会社選びをしていくと、学生が辞めないで働き続けてくれるのです。それがわかってきました。

(1)どんな会社であるとアピールしているか、(2)その会社で目指す仕事がどんなものである、実際に仕事をどう進めているか、(3)働く人たちは、どういう人たちなのか。学生がこの3つで会社の仕事を確認、観察していくと、かなりのことが見えてきます。

これら3つの項目は、そのまま組織が整備しておくべきもののはずです。当然ながら、これらを整備する役割を担うのはリーダーということになります。リーダー次第で、職場が変わることは、別にめずらしくもありません。当たり前のことでしょう。

 

9 3段階に分かれるマネジメントの階層

マネジメントを3段階に分けて考えるのは、3つだとわかりやすいからだと思います。(1)自分たちの仕事はどうありたいか、(2)成果を上げるための構想や仕組みはどうであるか、(3)どんなふうに実際の仕事を進めていくのか…ならばシンプルでわかるでしょう。

用語に直してみると、(1)のどうありたいかを示すのが、ミッションということになります。(2)の構想や仕組みが、戦略とかビジョンと言われるものです。(3)の実際の仕事の仕方を決めるのは、戦術とか計画(アクションプラン)と呼ばれるものにあたります。

これとは別に、目的・目標・手段という分け方もあります。目的はミッション・使命にあたります。目標は、採用した戦略が達成する見通しの客観的な基準、ゴールです。手段とは、実際の仕事に合わせて変更しながら進めるスケジュールということになります。

マネジメントの体系というのは、全体から部分に向けて構成されています。上位概念が全体統合を表していますので、上位概念から下位概念へと見ていくことが、全体から部分へということです。枝分かれしていく構造、末広がりの構造になっています。

目的とミッションは同じですが、戦略と目標は少し違うのです。案外、この違いに苦労する人もいます。星野リゾートのビジョンと目標の事例をお話すると、両者の違いがよくわかるようです。星野リゾートでは「接客の達人」というビジョンを掲げています。

▼星野リゾートは「リゾート運営の達人」という経営ビジョンを掲げている。旅館・ホテルの運営を主力事業として定め、その達人と呼ばれるだけの高いレベルを目指す―。そんな思いが込められている。 p.149 『星野リゾートの教科書』

HPにある星野佳路代表のあいさつで、『世界の人たちを友人として結んでいく』というミッションを示しています。そのためには社員が「リゾート運営の達人」になる必要があるのです。では、こうしたビジョンの達成はどう測ればいいのでしょうか。

▼経営ビジョンの実現にどれだけ近づいているかをはかる具体的な尺度も定めた。「顧客満足度(お客様アンケートの結果から数値化)」「売上高経常利益率」「エコロジカルポイント(環境基準に関する達成度を示すデータ)」の3つである。
この3つの尺度の数値目標も定めた。例えば「経常利益率」の目標は20%である。達成するのは簡単でない。 p.150

ビジョンを測定する客観的な基準が目標です。目標はビジョンが達成できたかどうかを判断する客観的な基準ということになります。ビジョンとは戦略であり、ミッションを達成するための構想とも言えます。そこに達成の判断基準が必要になるということです。

戦術と手段もやはり少し違います。戦術とはいわば計画です。計画を立てても、その通りには進みません。定められた計画が現実と齟齬を起こすとき、調整が必要になります。仕事をするとき、スケジュール調整が不可欠です。これが仕事の手段になります。

 

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