■マニュアル総論 その4 名前がついていないOJTのマニュアル

 

1 名前がまだないOJT・教育用マニュアル

OJTを行わない組織はまれでしょう。そのとき教える人で、どうOJTを実施したらよいかを考えない人はいないでしょう。しかしOJTマニュアルという名前はありません。興味深いことですが、これで困ったことになっています。なかなか作成しないのです。

『吾輩は猫である』の出だしは「吾輩は猫である。名前はまだない」でした。猫が飼われているのは間違いないのですが、それに名前を付けることがなされていないということになります。OJTを実施するときの実施要領があるはずですが、名前がないのです。

名前がない場合、たいてい大切にされていません。個人で記録を持っている人もいますが、組織がそれを重視していないという話がしばしば伝わってきます。そしてまた、名前がないモノですから、それは何ですかということから説明しないと通じません。

 

2 その場で作れるOJT・教育用マニュアル

操作マニュアルや業務マニュアルの講義の場合、参加者が多めですし、その場で作ることになじみませんので、つくり方についての話が中心になります。ところが、OJT・教育用マニュアルという「名前のない・実体のあるマニュアル」の場合、事情が変わります。

参加者が少なくなりますし、3種類のマニュアルの中で、一番すぐに作れるものですから、毎回、そのまま会社で使えるマニュアルを完成させてしまう方が何人も出てきます。
OJTや教育研修用のマニュアルの作り方を聞けば、皆さんその場で作れるのです。

ここに問題点があります。名前がないと知られませんし、何のことなのかということになります。名前の効果は絶大です。操作マニュアルを再定義する必要がある話を前回までにしました。業務マニュアルの場合、以前から何回かの再定義がなされています。

OJT・教育用のマニュアルをどう位置づけるのか、名前が決まらないことには、概念も明確にならず、普及も簡単でありません。実態があっても名前をつけられない状況である限り、簡単には自分のものになっていかないでしょう。何となく皮肉な状況です。

 

3 人材育成の重要指標

OJTや研修用のマニュアルについての相談がある場合、たいてい業務マニュアルのことで…と聞かれます。そうでない場合、社員教育について…という聞きかたになるのが普通です。少数ですが、操作マニュアルのことで…と聞かれることもあります。

学習する組織づくりが大切ですから、その道具としてOJT・教育用のマニュアルを作らなくてはいけないのです。組織がどう教えたら効果があったか、その記録を持っていないのはリスクになります。教育熱心というのと教育効果があるというのは別ものです。

どう研修したら成果が上がるか…ということは組織にとって、重要なノウハウになります。操作マニュアルが操作性の評価基準として使われはじめたのと同様、人材育成の効果を見るときの重要指標になるでしょう。それがまだほとんど手つかずのままです。

1月2月3月と3種類のマニュアルの講座が続き、2月はOJT・教育用マニュアルの講座になります。業務マニュアル・OJT編とうたったときに人が増えたので名称決定かと思ったら、名前を定着させようとしたのか、OJT・教育用マニュアル講座になりました。

業務マニュアルも、操作マニュアルも、どんどん変わってきています。再定義されることによって、道具としての役割が高まります。「マネジメントの道具としての業務マニュアル」、「マーケティングの道具としての操作マニュアル」となってきました。

以上の通り、3つのマニュアルの中で、今後一番注目すべきなのは、OJT・教育用のマニュアルだということになります。実際に作ってみれば、簡単にわかります。プリンの味は食べてみないとわからないのでしょう。実感することが大切なのかもしれません。

⇒この項続きます。 【その1】 【その2】 【その3】 【その5

 

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