■マニュアル総論 その3 操作マニュアル講座を終えて

 

1 操作性は根本問題

1月30日に操作マニュアル講座を行ってきました。おおぜいの方のご参加をいただき、ありがたく思います。テキストの大幅な改定を行ったため、講義前の予定が後回しになって、あたふたしていました。幸い今回のテキストの方がわかりやすかったようです。

講義の最初に、こんな話をしました。操作マニュアルをどんなに上手に作ろうとしても、操作性自体を良くすることはできない。理解が容易にできるようになって、慣れることで操作性の負荷が減ることはあるでしょう。しかし根本の問題は残ります。

操作性を良くする道具として、操作マニュアルが使えるというのは、コロンブスの卵です。操作マニュアルでの説明がシンプルなのに、実際の操作が快適に実践できるなら、操作性がよいと推定できます。操作の記述が一つの基準になりうるのは間違いありません。

 

2 完成した文書を冒頭に示す理由

操作マニュアルがわかりやすく説明されて、ユーザーが実際に操作できることは必要なことです。しかしそれだけでは不十分でしょう。操作を通じて何かができるということが大切です。操作を通じて何をするかを示すことが重要だということになります。

ずいぶん前の解説書でのことですが、章のはじめに完成した文書を示した上で、その文書のつくり方を説明していく形式の解説書がありました。こんなことができたらいいなと思わせる事例が並んでいたら、効果的でしょう。ここでは完成図が勝負になります。

このように操作をするということは、操作によって達成できることということです。達成できることが何であるのか、それがどんな魅力があるのか、そこを意識しないでは、使ってもらえる操作マニュアルにはなかなかならないでしょう。しかし難しいことです。

 

3 ユーザーが達成したいこと

操作には正解がありますから、一定のルールに縛られます。誰がやっても、同じ操作でないと同じ結果にならないのが原則です。大切なのは操作一つ一つが定型的でありながら、操作によって達成するものには多様性があって、定型的ではないということです。

「操作によって何をするのか・何ができるのか」ということは、製品づくりの発想とも共通するでしょう。「何をするのか」が先です。その上で、どんな操作が必要かが問われることになります。操作性に先立って成果物を明確にすることが必要といえるのです。

同じ操作の仕方であっても、マニュアルに記述する内容も、説明の仕方も、そのときどきで少しずつ変わってきます。おもに変化するのは、何がしたいかということです。達成したいことが変われば、説明の仕方が変わるのも当然ということになります。

操作マニュアルで大切なのは、達成したいことが何であるかを探ることだと言ってもよいのです。そのとき、ユーザーが誰であるかということが不可分の問題になります。「誰に・何を」を決めて、その上で、どのように説明するかが問われているのです。

⇒ この項続きます。 【マニュアル総論 その1】 【マニュアル総論 その2

 

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