■『アイデアのつくり方』:ヤングが最後に強調したこと

 

1 「最も困難な種類の知能労働」

ジェームス・W・ヤングの『アイデアのつくり方』は1940年に出版されています。いまだに現役の本です。素晴らしい内容だと思います。シカゴ大学の大学院生に広告の話をしたものが、この本の源流だったそうです。その後、実務家にも話しています。

60ページ程度の本ですから、おそらく1時間あれば読めます。記述も整理されたものですから、アイデアのつくり方自体が、なんとなく簡単な作業だと勘違いしかねません。しかし、もともと大学院生向けですし、簡単ではないのです。ヤングも書いています。

▼説明は簡単至極だが、実際にこれを実行するとなると最も困難な種類の知能労働が必要なので、この公式を手に入れたといっても、誰もがこれを使いこなすというわけにはいかないということである。/だからこの公式は、大いに吹聴したからといって私が暮しを立てている市場にアイデアマンの供給過多が起こるというような実際上の危惧はまずない。 (p.19)

アイデア作成の技術には、2つの原理と5つのステップがあります。[アイデアの作成はフォード車の製造と同じように一定の明確な過程であるということ、アイデアの製造過程も一つの流れ作業である]ということです。説明自体に不明確なところはありません。

 

2 「素材×組合せ⇒アイデア」

アイデア作成のステップは5つに分かれます。第1段階が資料の収集、第2段階が資料を一つ一つ検証して新しい組合せを考えてみること。第3段階で消化を待ち、第4段階でアイデアが思いつき、最後に、実用化させるために手を加えていく第5段階が来ます。

ヤングはアイデアのつくり方を、車のつくり方と対比していました。アイデアも車も同じように、「一定の明確な過程」だということになります。これは、要素(部品)を集めて、一定の構造(設計)にそって組み立てると、機能(製品)を獲得するということです。

このように製品製造の原則を「部品×組立⇒製品」とするなら、アイデアのつくり方の5つのステップの場合、「部品」に当たる既存の「素材」を、「組立」にあたる「組合せ」によってまとめることで「素材×組合せ⇒アイデア」が成立するということです。

 

3 アイデアの中核となる「一般的資料」

ヤングはアイデアを生み出す人の特徴を、パレートの学説を参考にして、[新しい組合せの可能性につねに夢中になっている]人だと言います。いいアイデアのもとになるのは、素材の新しさではなくて、素材の組合せ方の斬新さにあるということです。

このとき[事物の関連性をみつけ出す才能]が大切になります。ヤングはここで、[関連性を探ろうとする心の習性]を[修練するもっともよい方法の一つは社会科学の勉強をやることだと私は言いたい]と記します。法律・経済・社会学などを勉強することです。

第1段階の資料集めの過程で、関連性を見つける感性を養っていきます。資料には製品と顧客に関する「特殊資料」と一般的な知識の「一般資料」があり、社会科学の本などは後者に当たるでしょう。この資料集めの段階がすべての基礎になっているのです。

▼資料を実際に収集する作業は実はそうなま易しいものではない。これはひどい雑仕事であって、私たちはいつでもこれをいい加減でごまかいてしまおうとする。(中略)こういうやり方は先行する段階をさけて通って、いきなり第四段階に私たちの心をとりかからせようと試みていることになる。 (p.34)

[アイデアは、製品と消費者に関する特殊知識と、人生とこの世の種々様々な出来事についての一般的知識との新しい組み合わせから生まれてくるものなのである]とヤングは言います。そして本の最後で[唯一つ私が一層強調したいと思う点]をあげるのです。

[アイデア作成家の貯蔵庫の中の一般的資料の蓄え]こそが、アイデアを作り出すポイントである、特殊知識でも[個々の広告のための特殊なアイデアのすべてまでが同じこのソースから生まれてきた]と、一般知識の重要性を本の締めくくりに記しています。

 

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