■図解講座を終えて:変わらない基本と変わってきたところ

 

1 変らない図解の基本

図解講座を行ってきました。多数の方のご参加に感謝しています。入門講座という位置づけですが、図解の場合、この講座だけで十分かもしれません。あとは何を図解するかという内容の吟味が重要でしょう。それは作図する方が見つけてくる必要があります。

図や表を作成するときの標準的なルールは、何十年も前から基本的に変わっていません。それをうかがわせるエピソードを、ある業界団体の理事の方から聞いたことがあります。もう20年以上前のこと、娘さんがアメリカの大学に留学していたときの話です。

大学でレポートを書くときに、そこに載せる図や表をどう作ったらいいのかわからなくて困っているという連絡が理事のもとに来たそうです。それで、表やグラフの基本について書かれた昔の雑誌の付録を送ってあげたら、すごく役に立ったということでした。

10年以上前の雑誌だったということですから、いまから30年とか40年前に書かれたものです。どんな内容のものだったかはわかりませんが、おそらく基本中の基本について書かれていたのだろうと思います。そうした基本事項は変わっていないはずです。

 

2 基本ルールを習っていない事例

作図の基本的なルールは確立していますし、そんなにたくさんありませんから、1日あれば習得できます。しかしそうした図解のルールを習う機会が思いのほか少ないようです。講座を受講くださる方のうち、かなりの方が習ったことがないとおっしゃっています。

かつてと違って、最近では自分たちでPCを使って作図をするのが一般化してきましたから、ユニークな図を目にする機会が増えてきました。政府機関の資料の中にも、基本ルールに反した図がみられます。やはり習う機会がなかったのでしょう。

基本のルールからはずれた図表というのは、ルールを知る人から見ると妙な感じに見えるものです。基本ルールをお話したあとで、いくつかの事例を見ていただくと、これは素晴らしいとか、これはここがまずいとか、自分で判断できるようになります。

 

3 シンプルで内容重視の傾向

図解の形式が変った時期が少なくとも2回あったように思います。まずPCでの作成が容易になってきた時期が1回。さらにスマートフォンが普及してきたあとにも、変化が起こってきているように思います。画面が小さくなったため複雑な図は歓迎されません。

小さな画面でも分かる図というのはシンプルな形式で作られたものです。そうなると基本ルールが大切になってきます。ありふれた形で基本的な色使いで作られた図表がかえってよいのです。問題になるのは、そこで取り上げられている内容になります。

シンプルで内容重視という傾向は、今後ますます当たり前のことになっていくでしょう。実際、だんだん基本ルールにそったすぐれた図表が出てきています。画面が小さくても分かりやすいようにという要求は、図表にとって良い影響を与えているようです。

 

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