■ビジネスの把握:業務の分析方法 その3

1 仕事の質をどう決めるか

仕事の質をどう決めて行ったらよいでしょうか。何だかめんどうなことのようにも見えます。たしかに基準が明確でないと、混乱するかもしれません。仕事の質を決めることは、組織のありようを決めることでもありますから、基準を明確にしておくべきでしょう。

その基準となるのが「目的」です。組織は、家族や共同体のような集団とは違います。家族や共同体ならば、存続自体に意味がありますが、組織の場合、目的が問われます。組織の目的を達成することに、組織存立の意義があると言うべきでしょう。

組織の目的が仕事の質を決め、さらには組織と個人のベクトル合わせの基準になります。私たちは自分の仕事の時間配分を見ると自然に、本来の仕事をしているかどうかが気になるはずです。本来の仕事とは、組織の目的に適った仕事だということになります。

仕事の検証とは、「どうしてその業務を行うのか」「なぜその業務があるのか」ということの確認を基礎にするものです。組織全体の目標を確認することと同時に、仕事を構成している各業務について、その目的を問うことが業務の把握・分析の基礎になります。

2 目的を具体的に捉える

もう少し具体的に見てみましょう。「なぜその業務を行うのか、なぜその業務があるのか」を問うとき、究極の目的を答えることになりがちです。サービスに関して、「顧客満足のため」といえば、たいていの業務の目的になるかもしれません。

業務を分析するには「顧客満足」をもう少し具体的に捉える必要があります。提供する製品やサービスの質が問われるだけでなく、反復継続して製品・サービスを提供する体制が必要でしょう。コストとスピードが伴っていなくてはならないということです。

私たちは「この品質の仕事を、このコストで、このスピードで達成する」ということを意識する必要があります。品質の高いものがよく、コストのかからないものがよく、スピードの速いものがよいというのが基準です。その目的に適うかが問題になります。

3 「QCS」の観点から考える

目的とは自明のものではなく、問う必要のあるものです。これは生産性に関わってくる問題といえるでしょう。ドラッカーは「目的は何か」を問うことの重要性を「生産性をいかにして高めるか」(『プロフェッショナルの条件』所収)で指摘しています。

▼知識労働の生産性の向上を図る場合にまず問うべきは、「何が目的か。何を実現しようとしているか。なぜそれを行うか」である。手っ取り早く、しかも、おそらく最も効果的に知識労働の生産性を向上させる方法は、仕事を定義し直すことである。 p.55

[ある大手の生命保険会社は、保険請求処理の生産性を最近五倍に向上させた]という事例があげられています。[チェック項目を大幅に削減し、一軒当たりの平均処理時間15分を3分に縮めた]のです。チェック項目は、当初の30項目から5項目に減りました。

▼生産性の向上が実現したのは、「何が目的か」を考えたからだった。「出来るだけ安く、かつ、出来るだけ早く保険金を支払うこと」という答えが容易に導き出された。今日その保険会社では、詳しいチェックは50件に一件行うだけである。 p.55

この他にも、ドラッカーは事例をいくつかあげていますが、どれも品質、コスト、スピードという「QCS」の観点から考えると、わかりやすくなります。これを一言で言うと、目的を達成するための最短距離を考えるということになるかもしれません。

私たちは今ある仕事を機械化しシステム化することによって、効率化して生産性を上げようとする傾向があります。そう間違っていないはずです。しかし以上を見ると、何か少し違うとお感じになるかもしれません。その違いを感じとることが必要だと思うのです。

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