■「読む力・書く力」と「学習能力・コミュニケーション能力」

 

1 「アミラーゼ問題」

新井紀子は『AIvs.教科書が読めない子どもたち』で、読解力の低下が深刻であることを明確に示しました。読み書きを本気でやらないとまずいという主張の中で、一番切実な指摘だったと思います。以下の問題は、知る人ぞ知る「アミラーゼ問題」です。

▼次の文を読みなさい。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

セルロースは(     )と形が違う。

(1)デンプン (2)アミラーゼ (3)グルコース (4)酵素

この問題を、バイトに来ている東大生に頼んで東大のゼミ仲間に解いてもらった結果、「日本人大学院生は全員不正解。唯一正解したのが中国からの留学生だった」とのこと(「教科書が読めない人」は実はこんなにいる:東洋経済online)。嘘のような話です。

ためしに何人かの学生にこの問題をやってもらったところ、8割程度の正解率がありました。全員不正解というのは特殊な気がしますが、優秀な学生でも、間違う人がいるのは確かです。言葉の不自由な方々とのつき合いがありましたから、意外ではありません。

 

2 就活でのコミュニケーション能力

企業の人事担当の方々とお話しするとき、コミュニケーション能力を重視しているという話は必ず出てきます。たしかに大切だろうと思います。しかし当然のことですが、コミュニケーション能力というのは、ペラペラしゃべれるということではありません。

そうとう優秀な学生でも、緊張して、あまりしゃべれなかったと言ってくることが、何度となくあります。たいてい面接の結果はよろしくありません。そして毎回、それは会社のコミュニケーション能力の問題だから気にする必要はない…と話すことになります。

毎年、立派というしかない選抜をする会社があるのはご存知でしょう。一番優秀な学生たちを間違いなく選抜するのは、その会社のコミュニケーション能力が高いからです。面接で落ちた学生が、話やすかったとか、話を聞いてくれたという会社があります。

面接練習と称して、ぺらぺらしゃべらせる練習をするのは、ほとんど無意味だろうと思います。それよりも、きちんと相手の話が理解できて、自分の考えが正確に伝えられることの方が重要です。これは小学校、中学校での教育が大切だということになります。

 

3 日本語の大問題:従来文法の欠陥

読む力とは、相手の言うことを正確に理解する能力であり、書く力とは、自分の考えを正確に伝える能力です。これらは養成できます。本来、社会に出るまでに十分な力を身につけていなくてはならないものですが、しかしビジネス人でも能力不足の人がいます。

正確に日本語の文章が読めることは、学習の基礎です。読む力は学習能力に決定的な影響を与えます。ビジネス人の場合、読むことから始めて、書く方に向かうのが標準的な練習方法でしょう。小学生の場合、読み書きの両方が必要になります。

言葉の不自由な方々(失語症という障碍の方々)とのおつきあいが10年ほどありましたから、読み書きの能力の欠如は、ただごとではないという気持ちがありました。しかし明らかに問題のあるレベルの場合でも、いまだに無視されるか軽く扱われがちです。

読み書きのためには、日本語のルールをきちんと理解する必要があります。日本語の場合、従来の文法を理解しても、読み書きの能力は向上しませんから、たいへんな問題です。一部の企業が読み書き能力について本気で問題視しています。やっと…です。

 

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