■モーロワの「考える技術」:『人生をよりよく生きる技術』

 

1 体で考える方法・言葉で考える方法

モーロワ『人生をよりよく生きる技術』の1章「考える技術」は50ページ足らずの文章ですが、これがポストモダンの思考方法の基礎かもしれないと感じます。揺れ動く思考を明確なものにするための技術がどんなものであるか、その基礎的方法を書いた文章です。

私たちは大きな宇宙の中で、揺れ動く小宇宙であって、不安定な思考の中で生きているといえます。そういう中にあって、行動を[すばらしい正確さで導いている]のが「体で考える」行為です。スポーツや職人・芸術家たちは[身体でもって思考する]のです。

人間に限りません。[いろいろなものが置いてあるテーブルに、一匹の猫が飛び乗る]ことが出来る。[猫は、その筋肉でもって、眼球でもって思考した]のです。ただ[その力の及ぶ範囲は広くはない]。飛行機の操縦士は飛行機を考案したわけではありません。

私たちは思い描くべき映像の数が多すぎるために、[具体的な映像を、表層や記号に置き換えて、思考のスピードをあげなければならない]のです。そのとき[言葉でもって思考する]ことになります。しかし[言葉と事物の間にギャップが]生じることでしょう。

 

2 論理の方法・科学の方法

言葉で考えるためには、交通整理のように[言葉の通行を整理]する必要があります。それが論理です。しかし[論理は、新しいものを作りだすことはできない]でしょう。[事実らしい推論を行えば、それですべてが得られる]わけではありません。

モーロワはデカルトの方法を検証します。[早合点と先入観を注意して避けること]は大事です。[人間は急いでいる]、しかし[難しいことをさっさと理解することはありえない]でしょう。そして[利害関係が、これまた先入観を生むもとになってい]ます。

デカルトの方法は思考のブレーキ役になります。しかし[問題を解明すること][行動を導く指針ともなりえ]ません。そこで必要となったのが仮説です。「科学的方法・実験的方法」といえる[方法が人間に与えた力の大きさ]は、いくつかの分野で巨大でした。

しかし[科学の方法は宇宙を解き明かすものでは]ありません。[ヴァレリイがいうように、「うまく通用した処方の集成」にすぎない]のです。適用範囲が限られます。政治や経済や社会の問題では、実験するわけにいきません。科学的な思考が使えないのです。

 

3 直感のアンテナと信じる技術

モーロワは「実行は意志に先行する」というアランの言葉を紹介します。[一編の小説を書き始めた作家は、自分がこれから何を書こうとしているのか、正確に知っているわけではない]。計画は必要ですが、[計画を立てることと、行動することとは違う]のです。

[自分が解かねばならないであろう問題を思い描き、たくさんの事実を観察し、その観察からいくつかの法則を引き出しておかなければならない]。この知識が[肉体の中に刻み込まれ][彼の存在の「深層」にまで達し]たなら[すぐれた反射運動]が起こります。

[直感のアンテナ]が必要です。[形式を整えて推論を行うのでは]ありません。[知識は、必要に応じておのずと頭に浮かんで]きます。[歴史に学んだこと、自分の体験、手に入れた情報から、いっきょに問題の答えが浮かびでてくる]ということです。

全てがわかっている状態というのは存在しませんから、[知る前にすでに行動しなければならない」でしょう。[知ろうとする前に信じなければならない]のです。[考える技術とは、ゆえに信じる技術でもある]。目的地を目ざし、到達を信じて行動する技術です。

[様々な仮説に従って解釈しながら]行動しても、多くの仮説は間違いでしょう。[新しい仮説をたてること]が必要になります。[推論と経験と行動の不断の協力]が不可欠です。行動する人の[考える技術とは、思考を本能に作り替える技術]といえます。

 

参照ブログ(1) : ■カンと読み:米長邦雄とハロルド・ブルームの共鳴

参照ブログ(2) : ■誤読を積み重ねる「ストロングなプロの勉強法」:米長邦雄

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