■読み書きのために 6:日本語における強調文の構造

 

1 言葉を目立たせる役割をする「は・が」

文の主役になる言葉が何であるか、その目印として助詞「は」と「が」が接続しています。「は・が」の接続した言葉は多くの場合、文の主役になっているはずです。可能性が高いからこそ目印になります。「は・が」がついている言葉は目立つのです。

助詞「は・が」は、言葉を目立たせることによって文の主役を示そうとする役割を持っています。こうした言葉を目立たせる役割は、別の効果を生むことになります。文の主役だとわかりきった言葉に「は・が」がつくと、わずらわしく感じさせるのです。

なぜ日本語で、しばしば文の主役になる言葉を書かないのか。答えはお分かりでしょう。わかりきった言葉が目立つのは邪魔に感じるから書かないのです。主役を記述するときに「は・が」をつけて目立たせる役割は、わかりきった場合、不要になります。

 

2 最強の目印になる「は」

なかでも「は」は、一番言葉を目立たせる目印になる助詞です。「彼女はピアノが上手です」という文は、「彼女ならば、ピアノですね…上手ですというのは」という構造になっています。文の主役は「彼女」です。目印の強さは「は>が」となります。

助詞「は」がつくことで、対象が限定され、特定されます。限定し特定された対象は唯一の存在です。他との比較抜きに、その対象について言及することになります。比較抜きに語るのですから、その意味では絶対的ですし、対象の明確性が強い点で客観的です。

言葉を一番目立たせる効果を持つ助詞が「は」であることから、強調する言葉に「は」をつけるということが起こります。「この本はもう読みました」という例文を見ると、「この本」という言葉が目立っているはずです。「は」接続で強調されています。

主役ならば、その言葉が強調されるのは普通のことです。主役でない言葉を目立たせる場合が強調になります。「この本はもう読みました」の主役は「この本」ではありません。文末の「読みました」というのは人の行為ですから、主役となるのは人のはずです。

「この本はもう読みました」という例文は、通常形式なら「私はこの本を読みました」となるものでしょう。主役にならない「この本」に助詞「は」をつけて目立たせています。また例文で主役を省略して「この本」を文頭にもってきているのも注意すべき点です。

 

3 日本語における強調の形式

言葉を強調するとき、語順を変更してその言葉を文頭に持ってくるのは、日本語に限らずよく見られることです。英語の場合でも、語順を変えることによって意味内容に変化が起こります。後ろに置かれるはずの言葉が文頭に来たら、意味が変わるということです。

たとえば「I went to the cinema yesterday.」という通常の言い方を、「Yesterday I went to the cinema.」とした場合、「昨日は特別なことがあって…」という意味が加わることになります。「yesterday」を前に出すことはあまりないようです。

漢文でも同じことです。「鳥吾知其能飛」の例を加地伸行『漢文法基礎』はあげています。「吾知鳥能飛(吾は知る、鳥のよく飛ぶことを)」というのが通常の文です。文中の「鳥」を前に出して強調するため「鳥、吾そのよく飛ぶことを知る」となります。

日本語でも同様です。言葉を強調するときに、その言葉を文頭に出します。そのとき接続させる助詞は、言葉を目立たせる「は」が適切です。したがって、強調する言葉を文頭に出して、その言葉に「は」を接続させることにより強調の形式が出来上がります。

 

 

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