■「どんな会社に入ればいいのですか」と聞かれて:学生の意識の変化

 

1 厳しくなった2020年度の就職活動

サービス業に就職をする人たちにとって、2020年度の就職は思ったよりも厳しい様子です。昨年なら間違いなく内定がもらえたろうと思う学生でも、ダメでしたということが何件かありました。その後発表された今年1-3月の業績を見ると厳しい理由もわかります。

来年就職活動をする学生たちが、先輩たちの苦労をみると不安になるようです。卒業した先輩も1年でおおぜいの人が辞めています。せっかく内定をもらっても、楽ではないのだと身に染みるようです。これが勉強する契機になれば新たなチャンスかもしれません。

何度か学生から「どんな会社に入ればいいのですか」と聞かれます。自分の行きたい会社、今後も業績のいい会社がいいよね…というくらいなら、その場ですぐに答えられるでしょう。しかし具体的にどうやって確認したらいいかとなると、簡単にはいきません。

 

2 ドラッカーの3つの視点

ドラッカーの論文でも代表的なものに「The Theory of the Business:企業永続の理論」があります。そのエッセンスは、(1)ビジネスの領域を設定し、(2)成果の基準を決め、(3)仕組みを作る、この3つからなる「事業の定義」を明確にするということです。

学生もこの視点が参考になるだろうと思います。簡単ではありませんが確認が必要です。(1)現在のビジネス環境からみて、この会社が発展するかを考え、(2)何を成果とする会社かをみて、実績を確認し、(3)ビジネスモデルが妥当かを判断することになります。

ここ数年の業績がわかる会社の場合、売上と利益を確認し、何をアピールしているかHPと会社説明会とで確認し、社員さんたちの様子を見る。先輩の評判も聞いてみる。同業他社と比べてどっちのサービスが魅力的かを考える。このくらいならできるはずです。

 

3 新井紀子が指摘するAI恐慌

『AIvs.教科書が読めない子どもたち』を書いた新井紀子のインタビューが「週刊東洋経済20191/5新春合併特大号」に載っていました。サービス業に従事したいという学生に限らず、AIの影響について、今後注目すべき点は何であるかが語られています。

▼AI時代に求められる人材は両極化するだろう。一方は非常に高度な能力やセンスを持つ人材。もう一方は屋根の雪下ろしのような機械が苦手な肉体労働に従事する人材だ。おそらく大多数の人は、後者に属するだろう。 p.117

厳しい時代がやってきます。新井は[IT恐慌というのは21世紀に入ってずっと起こっていると私は考えている。その先に起こるのが、AI恐慌ではないか]と語ります。代替可能な仕事なら、[グローバルな賃金競争にさらされ、失業者が発生する]のです。

新井は言います。[重要なのは、マーケットが小さくてもオンリーワンのモノやサービスを見つけること][既存の企業は図体が大きすぎて、こうした市場に入り込めて]いないのです。ドラッカーの3つの視点と合わせて考えるべきでしょう。

今年の就活では、一般的な基準からすると「何で?」という選択をする学生が次々と出てきています。名前の知れた会社でなくて、独特な会社を選ぶ学生が多くなって、学校側が当惑しているとの話も聞きます。若者は独特のセンスで感じ取っているのでしょう。

教え子の中にも、学校の指導とは別に自分で会社を絞り込んでくる学生が何人もいました。ドラッカーの3つの視点と新井の提示した点の話をすると、「ああやっぱりね」と反応する学生がかなりいます。学生の意識が急速に変わっていることは確かなようです。

 

★ ドラッカー The Theory of the Business 「企業永続の理論」を読む
★ ドラッカー The Theory of the Business 「企業永続の理論」再論:GMの事例

 

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