■組織の動かし方について:塩野七生とジェームズ・C・コリンズと真藤恒

 

1 塩野七生の歴史的な視点

歴史的な視点は大きな枠組みを考えるときに役立つことがあります。組織のことを考えるときに最近思い返すのは塩野七生の「人材を駆使するメカニズムについて」の話です。連載の「政治の仕事は危機の克服」は『逆襲される文明 日本人へⅣ』に所収されました。

塩野が学んだというのは、長期の繁栄を目指すのなら、リストラに頼らずに人材がいる前提で、いまいる人材を駆使するメカニズムを構築することが必要だということでした。[リストラ主義だと短期に回復を達成できるが、それとて長くはつづかない]のです。

今いる人材を駆使するメカニズムとは、[自分たちがもともと持っていた力と、自分たちの中にいる人間を活用するやり方]を構築して運用していく仕組みのことです。簡単にリストラに逃げないで、このメンバーで何ができるかを考えるということになります。

危機を乗り切る方法を考えることです。成長期に成功した仕組みも[停滞期に入ると、その人材を駆使するメカニズムが機能しなくなってくる]。そのとき目的を決めて人を選別するのではなくて、現在の人員で危機を克服するメカニズムを考えることになります。

 

2 『飛躍の法則』の補助線

基本的な視点というのは具体的ではありませんから、具体的に生かせるのは、それを考え続ける人だけかもしれません。実際、会社の事例にならないとよくわからないと何度か言われました。それである時、似た話を知りませんかと聞いてみたことがあります。

ジェームズ・C・コリンズ『ビジョナリーカンパニー②飛躍の法則』に、[偉大な企業は、人員削減を戦術として使うことはめったになく、主要な戦略として使うことはまずない](p.85)とあります。かなり読まれた本ですから、あれかという人がいるはずです。

▼飛躍を達成した企業十一社のうち六社は、転換点の十年前から1998年までの間に、一度もレイオフを行っていない。残りのうち四社も一回か二回しか実施していない。 『ビジョナリーカンパニー②飛躍の法則』 p.86

『飛躍の法則』第三章「誰をバスに乗せるか」では、飛躍する会社・偉大な企業の場合、「最初に人を選ぶ」という段階を踏んで、[その後に目標を選ぶ]という基本的な手法をとるとしています。この本を読むときに、塩野の視点は補助線になるはずです。

 

3 真藤恒の示した「組織の動かし方」

何かを理解し、具体策を検討するときに、基本的な視点を大事にしておくと有利に働くことがあるように思います。少なくとも基本的な視点があると、他の本を読んだときに、それが基本になる考えかどうか、判断することが容易になるはずです。

これは『飛躍の法則』の場合に限りません。塩野の言う「人材を駆使するメカニズム」という視点を持つことで、意味がやっとわかった気になった言葉もあります。真藤恒『歩み』第二部「わが体現録」の「一、組織の動かし方、そのポイントは何か」もそうです。

▼組織だから、組織のランクに応じていい考えは伏在しているが、それがなかなか実行の面に出てこない。一人ひとりが考え出して実行してほしいが、それがなかなかできないので、組織上、上のランクの人間が自分の配下の色々な考え方を吸い上げて、それを何段かランクの上の権限で実行に移していく。その場合考えた人を起用して、その考えを活かしていく。いわゆる組織の力を使って組織の弊害をなくしていくという運営の仕方が、組織の動かし方の要諦である。 『歩み』 p.85

ここで語られている「組織の動かし方の要諦」は、塩野の視点に対する解答とも言えるでしょう。[人材を駆使するメカニズムが機能しなくなって][サビついてしまう]のに対して、どうサビを取り除いて組織を有効に動かすかのポイントが示されています。

組織には「人材を駆使するメカニズム」が必要です。その原則は何であるのかというのが一番基礎になる問題の一つでしょう。この視点で考えていく必要がありそうです。その過程で、誰がどれだけ考えたかという点も見えてくるのではないかと思います。

*真藤恒『歩み』は非売品のため、現在入手困難ですが、そう遠くない時期に出版されるとのお話があります。この名著の出版を期待して待っているところです。

 

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