■組織としての企業の理論:マネジメントの基礎

 

1 「組織としての企業の理論がない」

組織にとって現場の知識が重要であることは常識です。現場主義とか現場力という言い方もあります。さまざまな知識が現場に蓄積されていますから、それらをすべて中央で管理するのは無理です。そのため組織にとって現場に自由が必要になります。

現場の知識が大切だということは、組織にとってどういうことを意味するか、確認が必要です。青木昌彦は『移りゆくこの十年 動かぬ視点』で、ハイエクが現場の知識を重視する点を指摘しながら、ハイエクには「組織としての企業の理論がない」と指摘しました。

組織としての企業の理論とは、どういうものでしょうか。基礎的なことほど、かえって忘れがちです。組織がなぜあるのか、組織があったほうがいい理由を明確にすることが、組織を作り、企業活動する裏づけになります。それが組織としての企業の理論の基礎です。

 

2 企業が社会で存立する条件

組織がなぜあるのか、企業活動がなぜ社会で認められるのか-、企業活動が社会にとって有用であるからということが前提になります。社会にとって有用な活動をする限りにおいて、企業活動が認められるということです。有用でなかったら存立できなくなります。

組織を作って活動することによって、企業は何を社会にもたらすのでしょうか。一番単純な答えは、個人にはできないことを達成するということになるでしょう。個人個人の努力だけでは、企業活動によって達成したほどの成果が上げられないということです。

組織を作る理由とは何か。個人の成果をすべて足した合計よりも、各人の役割を決めて組織で活動するほうが成果を上げるということです。個人が別々に活動するよりも、集団で活動する方が大きな成果を上げるならば、組織を作る条件を満たしたことになります。

「どういう仕組みを作れば、組織としての企業活動の成果が上がるか」の論理が必要です。これが組織としての企業の理論になります。現場の知識が重要というだけでは不十分です。それをどう生かすべきか、管理・運用・改善の仕組みが問われることになります。

 

3 社会との約束・組織を構成する個人との約束

組織や企業が社会で活動していくためには、自分たちの活動が社会にとって有用であることを示す必要があります。これを明示したものが企業理念とか使命と言われるものです。内容が陳腐でないか、形式的な扱いにすぎないかを確認することが必要になります。

組織が社会との約束として企業理念・使命を明示するのは、社会との約束ですから、それを言葉にして明示することが原則になるということです。「その達成のために、どうするのか」が問題になるので、そこからビジネスモデルが生まることになります。

ハイエクには「組織としての企業の理論がない」と指摘されると、ちょっと驚きますが、官僚組織を分析したウェーバーの場合でも同様です。企業の理論は第二次大戦後に確立されたものというべきでしょう。マネジメントの前提になる考えです。

どうすれば成果が上がるかを考えるのがマネジメントの中心課題です。現場の知識をどう生かして、全体としての成果をどう上げるのか、各人の力をどう組み合わせるのが一番効果的か。基礎的すぎることかもしれませんが、これが組織そして企業の原点です。

企業活動が社会にとって有用であるという前提を確立し、組織を構成する個人にどういうルールで活躍してもらうかを決めておくことは、企業にとって大原則です。それを記述しておくのは当然であり、これを記述する文書が業務マニュアルということになります。

求める人材の条件に経営者の意識を持った人と記載する会社がありました。注目に値します。HPを見る限り、その具体的な内容は見えてきませんでしたが、それがかなり整備されていることもうかがえました。原点に戻るということは大切なことだと思います。

⇒ cf.  【 業務マニュアルの再定義:全体最適の基礎 】

     

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