■講義に必要なハードル:ファインマン効果への対策

 

1 内容を書き込みすぎるテキスト

先週、OJT・社員教育用のマニュアル作成講座のテキストを作っていて、最後に予定が大幅にくるいました。調子に乗って必要情報をどんどんテキストに書き込んでいったのが失敗の原因です。内容を書きすぎたテキストになっていたので作り直しました。

丁寧に説明しすぎたテキストを使って講義をすると、どうなるか。ご存知の方も多いでしょうし、経験から感じ取っている方もいると思います。成果が上がらないのです。実務家向けの場合、特にその傾向が強く現れます。作る側にとっても、悩ましいところです。

一部の方からテキストについて、もっと丁寧に書いてほしいという要望がアンケートで出されることがあります。丁寧に書いたテキストの場合、丁寧すぎてよくないという要望はまず出ませんから、意識しないでいると丁寧に書く方向に行ってしまいがちです。

 

2 確認して安心するステップ

企業の社員教育を担当する方から、どうやったら参加者の意欲を高めることができるかという悩みを聞かされることがよくあります。忙しい中でどこまで教育訓練ができるのかわからないという言い方もなされますから、環境が整っていない点もご承知なのです。

それにもかかわらず、うまくいく例があります。忙しくてもなんでも、面白くなれば勝手に意欲が高まりますから、どうやったら意欲を高めることができるかと悩むことになるのでしょう。意欲を高める法則があれば知りたいという思いは自然なことです。

一つ気をつけているのはハードルの高さです。高すぎるハードルはよほど優秀な方でない限り、やる気をそぎます。一般的には、やや低くめのハードルを設定することです。それをクリアすることで安心感が得られるレベルにするのが効果的だといえます。

参加者が「ここまでは大丈夫」と確認して安心できることが大切です。確認を積み重ねていくことによって、高いゴールに到達できる…というルートが示せたなら、成功の確率が高まります。無理のないステップで、ゴールにたどり着ける道順が必要なのです。

 

3 検証に必要な測定方法の用意

テキストの場合でも、内容が少し不足するくらいのほうが効果を上げます。内容をやや絞ったテキストにすると、受講者は程よい緊張感を持って講義を聞き、理解に必要な内容をメモしてくれることが多くなるでしょう。理解のために一歩踏み出してくれるのです。

どこまで書くべきか書かないでおくべきか…ということについて、明確な基準を作るのは無理かもしれません。受講者の反応を見ながらになると思います。ステップを駆け上がるために、ある程度の抵抗というか摩擦がないと、滑り落ちてしまうことはたしかです。

気さくなノーベル賞学者のファインマンさんの講義はわかりやすくて人気があったそうですが、講義を受けた学生の試験の成績がいま一つだったともいわれています。教育担当者もファインマン効果と呼ばれる現象をもう一度意識する必要があるでしょう。

そのためには上手な測定方法を用意することが重要です。説明のあとに演習や実践を取り入れ、その都度、習得を確認していくこと。これが受講者だけでなく指導する側にも安心感を与えてくれます。実行には検証が必要だという原則が当てはまるようです。

 

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