■日本語のバイエル:ロシアからのメール

 

1 説明がわかりやすいと言ってくれた留学生

日本語を書くときにも、ピアノのバイエルみたいなものが必要だろうと清水幾太郎が語っていました。まさにその通りだと思って、「日本語のバイエル」を書き始めたことがありました。更新もしないで何年も放置していました。いずれ本にしたいと思っています。

アーカイブになったサイトをみたロシア人からメールがありました。日本に留学をしたことがある日本語の先生とのことです。説明がわかりやすいと書いてくださいました。昨年教えていた留学生たちに続いて、わかると言ってもらえて励まされます。

しかし、もう少し説明しないとよく伝わらないところがありそうです。日本語の構造がどうなっているのかという点です。英語と日本語では文のルールが違いますから、使う道具も違うはずです。主語という用語の概念に違いがありますし、品詞の役割も違います。

 

2 英語の主語概念

英語の場合、主語S・動詞V・目的語O・補語Cを並べて基本文型が作られています。ここで特徴的なのは、動詞Vで主語が区切られているという点です。動詞の前と後で、文を構成する要素が分断されています。日本語の構造とこの点が大きく違います。

英語の場合、主語だけが飛び抜けて違う存在になっています。この形式ならば、主語・目的語・補語という要素に分けて語順を基準にして構造を見て行くのにも意味があるかもしれません。しかし英語の文法の概念を日本語に使うのは、かなり無理があります。

「今日、私は図書館で本を借りました」という文を見てみましょう。文末にある「借りました」という語句が文の要素を束ねています。文を束ねる機能は同時に、文の意味を確定する役割も果たしています。文末が「借りませんでした」なら文の意味が変わります。

 

3 主役と脇役と条件

例文の構造を見ると、「今日…借りました」「私は…借りました」「図書館で…借りました」「本を…借りました」という風に、「借りました」を核にして、その前に「今日」「私は」「図書館で」「本を」という語句が並べられているのがわかります。

これらの語句の重要性に大きな違いはありません。相対的な濃淡があるだけです。「いつ?」ならば「今日」が必要情報ですし、「誰?」ならば「私」が必要情報です。並列された語句の役割とニュアンスの違いをつけているのが助詞だということになります。

並列された語句の役割を示すときに、特別扱いされる主語の概念を使うのはしっくりきません。相対的な違いを示すには主語の概念や目的語、補語を使う代わりに、別の言い方が必要でしょう。日本語のバイエルを考えた当初は「焦点」という用語を使っていました。

しかし、語句が並列にされ文末で束ねられる構造を示すのにどうもふさわしくなくて、いまは「主役」「脇役」「条件」という概念で説明しています。講義では、こちらの用語を使いだしました。「私は」が主役、「本を」が脇役、「今日、図書館で」が条件です。

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