■業務について:岡崎久彦の情報戦略論を参考に その2

 

1 岡崎の一冊『情報戦略のすべて』

岡崎久彦の情報戦略論は私にとって、業務を考えるときの基礎になってきました。[私がいままで書いてきたものの中で、他人様に披露できるようなものは、ほとんど情報論だったと言って過言でない](p.12)と『情報戦略のすべて』の中に記しています。

[情報分析に関する過去二十年間の私の論文]を所収した2002年『情報戦略のすべて』は岡崎の代表作となる一冊です。そのエッセンスは自身で記すように『国家と情報』第一章「国家と情報」と『情報・戦略論ノート』第一章「情勢判断とは何か」にあります。

前者は1980年の論文で、[情報分析を行うにあたっては、(1)あくまでも客観的であること、(2)柔軟であること、(3)専門家の意見をよく聞くこと、(4)歴史的ヴィジョンを持つこと](p.121『情報戦略のすべて』)が必要である点を主張します。

後者は情報収集の過程に言及した1983年の論文です。[情報の管理事務]には、①情報収集、②整理、③分析、④伝達…があり、さらに⑤秘密の保全が加わって、[これで情報事務が完了する]ことを論じています(p.142)。その他の論文も読む価値があります。

情報分析の方法は、そのままビジネスで使えます。この手法がマーケティングの手法に通じるのは言うまでもありません。希望的観測や好き嫌い抜きに分析すること、同時に[一寸先は闇だということを何時も忘れないこと](p.54)が必要なのも同様です。

 

2 2002年の岡崎の情報分析

序論の分析も『情報戦略のすべて』を際立たせています。ここで示された見解は、21世紀初めの東アジア情勢を分析するときの基本になってきました。それはずっと正しかったように思います。そして、この基本構造の変化が2018年に確認できたと言えそうです。

中国の1978年以降の改革開放により2000年には[国際慣行に通じたビジネスマン、国際水準の品質管理のできる技術者]がそろい[賃金の低さが圧倒的な力を持つ武器となり、世界のどの国もかなわなくな]って[この経済発展を止める方法はな]くなりました。

▼各国競って中国との経済交流にそれぞれの経済活路を見出すこととなろう。すなわち互恵関係である。ただ、一つの商売で双方が一億ドルずつ儲けたとしても、それがそれぞれのGDPに及ぼす効果、つまり乗数効果は、被投資国であり経済成長度の高い中国のほうは数倍しよう。あるいは投資側が工場を移転し、また収益を中国に再投資しなければいけないことになると、投資側の乗数効果はマイナスになる。(p.24)

2002年の発言です。岡崎は以上の情勢分析を前提に言いました。[中国経済が頭打ちになること、政治的に分裂することは、中国が心配することで、日本が心配することではない]。[日本が心配することは][東アジアの力のバランスが崩れることである]。

 

3 付加価値競争への対応

岡崎の示した基本構造が変質したようです。中国での賃金は上昇しました。2018年の中国の経常収支が赤字予想になっています。資金の流れに変化が起きていることがうかがえます。短期的な現象ではないでしょう。低賃金を前提としたビジネスは苦しくなります。

賃金が上がったら、付加価値をつけたビジネスにするしかありません。中国経済が落ち込もうがどうなろうが、付加価値をつけた製品づくりに必死な中国系の組織がすでに生まれています。競合する会社も多くなるはずです。業務の改善だけで対応できるでしょうか。

業務を実行し達成を確認し、目標と比較しながら目標管理をしていくのはマネジメントの基本ですが、目標値に長期的な変化が出てくる可能性があります。[情報を見極めて、出来る範囲の中で最善の選択をする](p.12)という機会が増えてくるはずです。

従来よりも「ワンランク上」の製品やサービスをどう生み出せばよいのでしょうか。岡崎の指摘にもあるように、専門家の意見が重要になるのでしょう。高度な付加価値をつける専用部門の整備に加え、業務全体の見直しが必要になる組織が少なくないはずです。

*専門家の意見の重要性について
「ブランド戦略の基礎にある個人の力:ジャック・ホイヤーの言葉」

 

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