■新しい「知的生産の技術」のヒント 2/3:カードからノートそしてPPTへ

1 素材の選択と並べ方

カードという道具を使って、その組み合わせから何かを生み出す方法は、有力な知的生産の技術に違いありません。私たちは部品を選び、それを組み立てることによってモノを作ります。カードの内容が部品であり、それを組合せて何かを創造していく方法です。

ここで大切なことは、部品を選ぶことと、組合わせて秩序を与えることでしょう。選び方と並べ方ともいえます。同じ部品を選んでも、その並べ方が適切でなかったら、いいものになりません。素材の選択と並べ方の両方が適切であることが必要だということです。

カードという道具は、素材の保存に使われます。選択された素材が部品であり、部品の並べ方が組立ての設計ということになります。素材を保存するだけでなく、それをどう選択したか、どう組合わせたかという点も、保存しておいたほうがよさそうです。

 

2 アイデアは関連した一群のもの

何かを創造しようとしたら、分野を定めてそこに意識を集中したほうが成果が上がります。何となくうまくいけばよいなあ…という程度ではなかなかうまくいきません。カードを組合わせるときの前提条件として、カードの内容が頭に入っている必要があります。

よほど狭い分野でない限り、何かをまとめるときに、素材は200~300は必要です。そのくらいのカードがなくては効果が期待できません。そんなにたくさんのカードが作れるのかと思うはずです。しかしメモ書きを習慣としていれば、たいてい何とかなります。

メモ書きをする人なら、あるとき何かが思いつくと、その連想から次々思いつく…という経験をしたことがあるでしょう。アイデアは独立した単独のものではなくて、どちらかというと関連した一群のものです。それらを記録するのはカードではない気もします。

関連した一群をアイデアと考える人は、創造の断片をカードでなくて、ノートに記録するようになりがちです。清水幾太郎は[自己中心の主観主義でノートを作る]と『本はどう読むか』で書いています。自分のアイデアですから自己中心の主観でよいのです。

 

3 A4の備忘録での問題

ビジネス文書がA4一枚をある種の規格と考えているのは、皆さんご存知のことです。自分のアイデアの中核部分を記録してみると、せいぜいA4一枚分くらいしかありません。その組合せが一区切りということなら、カードにして10枚にならないでしょう。

私の場合、A4のコピー用紙にひとまとまりの考えを書いていました。そのうち、①手書きでは情報量が少ない、②一目で見直すのに苦労する、③どこがまずいか、わかりにくい…ということでPC入力をはじめました。このブログも、そうした一種の備忘録です。

しかし問題が起きました。「日本語の効率」と「ワープロの普及」の関係を一言で説明できなかったのです。≪漢字を手で書くより、キーボード入力して変換するほうが効率的≫…と言えばよかったのでしょう。不要な知識が絡んだせいか、伝わりませんでした。

その後、学生たちに「色の基礎」の話をしました。自分のテキストを使って説明すると、講義よりずっとよくわかったと言ってくれました。ところがテキストだけ渡した学生はよくわからなかったのです。そのうち、何でわからないのか、やっとわかってきました。

情報の一単位を絞らないと、知らない分野の話は伝わらないのです。カード一枚に入る程度の内容なら理解できます。それを並べることが有効でした。情報の粒をそろえる点で、カード方式は優れていたのです。以降、パワーポイントを利用することになりました。

⇒ この項続きます。

[その1]はこちら

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