■文章表現以外の問題について:文書作成講座を終えて


 

1 数字の意味が伝わらない理由

文書作成講座を行ってきました。今回は、メーカーで設計を担当している方々の参加が中心でした。日本のトップメーカーで活躍されている人達ですので、記述の内容に関してあれこれ言う必要はありません。しかし専門家でない人たちにどう伝えるかは問題です。

文書の中の数字が間違っていなくても、相手にその数字の意味が伝わらないことがあります。なぜ伝わらないのでしょうか。理由は一つではないかもしれません。よくあるのは、その数字の基準がわからないこと、あるいはその数字の意味がわからないことです。

数字の基準がなんであるのかわからない例は、しばしば見れらます。たとえば「輸入の7割」というときの「7割」の基準が不明確です。「輸入量」の7割なのか、「輸入額」の7割なのか、あるいは別の基準の7割なのか、明確にする必要があります。

もうひとつ問題になるのが「7割」の意味です。予測が3割だったのが7割だったなら、これは異常に大きな数字だということになります。このとき「予測が3割だった」ということがわかっていないと、7割の意味がどんなものであるのか伝わりません。

 

2 「実行・測定・比較」に必要な基準

ビジネス文書の場合、マネジメントの原則が基礎になっています。目標管理の原則は、(1)実行し、(2)それを測定し、(3)目標と比較していくことです。このとき問題になるのが、測定の尺度は何かということと、目標とのズレをどう考えるかということです。

ビジネス文書で扱われる数字がこうしたマネジメントの原則に反する場合、その数字は役に立たないと言われることになるのです。「輸入の7割」では測定の基準が何であるのかわかりません。目標との比較なしに「輸入の7割」を評価するのは難しいでしょう。

また測定という以上、「長期・短期」と記述するよりも、具体的な数字で示したほうがよいでしょう。数字で示す場合、どんな基準・尺度であるかを示して、その意味を付加する必要があります。「3年以上の長期契約」という記述形式が好ましいということです。

 

3 TPO:文章表現以外の問題

私たちがビジネス文書で数字を扱うとき、基準となる尺度と評価基準に気をつける必要があります。さらに、その数字が出てきたときの条件が問われることもあります。どういう条件下で、どんな数字になったのかが問題にされるということです。

条件というのはご存じの通り、「いつ・どこで・どんな場合」というものです。TPOという言い方になじみがあるかもしれません。私たちが何かをするとき、たいてい「いつ・どこで」という条件が絡んできます。この条件を示すことが必要になるのです。

私たちが何かの経験をする場合、「いつでも・どこでも」ではなくて、ある時のある場所での出来事という前提に立ちます。ビジネス文書に条件が必要なのは当然のことです。逆に言えば、「いつ・どこ」の条件を外すことが「真実」に近づく道といえるでしょう。

基準となる尺度があるために正しい数字となり、評価基準があるために数字の意味が判断できます。評価の際に、「追い風何メートル」といったTPOの条件を考慮することも必要です。文書作成では、文章表現以外に問題となることがあるということです。

 

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