■無理をしないで成果を上げる:社内教育の方法 その2

 

1 二系統の教材:必要最小限と応用・発展

何かを習得するとき、私たちが一定期間・一定時間に習得できる分量は限られています。一定量を超えると、習得できないとことが出てくるはずです。平均的な人ができないことまで要求することは、無理をしていることになります。これでは成果が上がりません。

平均的な人が習得できる分量にした上で、出来る人にもどんどん先に進んでもらえばよいのです。出来る人がいると、集団全体をぴっぱってくれます。出来る人に待っていてもらうのはよくありません。全体のバランスとれるように工夫していきます。

出来る人を伸ばすためには、応用・発展用の教材を用意しておくことが必要でしょう。集団ならば、習得に早い遅いが出るのは当然のことですから、最小限のものと、ここまで出来たら素晴らしいという二系統の教材を用意しておくのが原則になります。

ここで大切なことは、必要最小限の教材と応用・発展用の教材の、ベクトルが同一であるということです。ベクトルというのは講義の狙いが何であるのかを示したものにあたります。そこで習得することが何であるかを統一的に示す目的が必要になるのです。

目的を示し、具体的な目標が何で、どう達成したらよいか…を明確にできたなら、プログラムは成功するはずです。「何を・どう習得するか」が明確になれば、進度の速い人が全体を引っ張ってくれます。平均的な人も刺激を受けて、成果が上がるようになります。

 

2 筆記試験対策の場合:数的処理なら40題

たとえば筆記試験対策だったら、まず、やるべき範囲を決めていきます。何が必要不可欠な範囲かを決めることです。範囲設定とともに、「習得」のレベルを決めます。このように広さと深さを検討して、全体の分量を想定していくことになります。

全体の分量の見積もりができたら、平均的な人が、それをマスターするのに、どのくらい時間がかかるかを想定していきます。時間いっぱいになるようでは失格です。平均的な人が、楽々こなせる時間を想定します。講義時間数を頭に入れながらの調整が必要です。

筆記試験の対策の場合、筆記試験をパスすることが目的ですから、満点を目指す必要はありません。では筆記対策の目標も満点でなくなるのでしょうか。違います。量を大胆に絞って、それらを確実にという原則が適用されますから、満点が原則になるのです。

2つの条件が求められます。(1) 分量を減らして参加者が確実に理解できることを目指すこと、(2) 習得したら合格水準を超える内容になっていること…です。問題を減らすことは初期に脱落するリスクを減らします。この意味でも、内容の厳選は重要です。

筆記試験対策の数的処理の問題を前期は10題に絞りました。レベルのやや高い小問つきの問題です。この中核部分を理解すれば、それを活かして後期の問題数が増やせます。年に20コマ未満の講義ですから、後期に30題弱を加えて必須問題が約40題でした。

 

3 標準的プログラムに必要な3原則

教育プログラムを組み立てる場合、やるべき課題を選んで、ここまでやれたら合格というゴールを決めます。たいていそのあと、ゴールまでの進捗のステップを作っていくはずです。しかし各人の進捗が違いますから、そんなに簡単に決められません。

受講者の人数にもよりますが、全体が4つくらいのグループに分かれるのが普通です。楽々クリアの人、何度目かに問題がなくなる人、何度か聞いても不安の残る人、わからないという人。この人数のばらつきが問題です。これらを頭に入れて進捗を想定します。

同時に受講者が、「何が問われるのか」を理解することが重要です。試験対策なら「何が出るのか」が分かるようになることが重要なポイントになります。最低限の内容を身につけたなら、何が問われているのかが感覚的にわかるようにしていくのです。

言語分野の問題なら、書かれていることの正確な理解、基本的な読解が求められます。したがって、正確な読み取りをするのに必要なスキルの習得が講義の目標だということです。該当分野で、全体を貫くものが何であるか…ということの理解が求められます。

全体を束ねる価値基準が何であるかを明確にすることが重要なのです。あえて言えば、自分の絞り込んだ教材を「体系化」するということになります(⇒「体系的と体系化」)。自分が選び出した問題を通して、何が問われているのかを明示することです。

もっと俗な言い方をすれば、たとえば就職試験の筆記対策講義を受けた後、生徒が「出る問題は決まっている」と言いだせば、伝わったことになります。各レベルの人たちが、求められているものが何であるか、理解できるようになっていたら成功です。

標準的な教育内容の場合、無理なく成果を上げるためには、[1] 内容を必要最小限にまで徹底的に絞り込む、[2] 絞り込んだ内容が完全に理解されるように工夫する、[3] プログラムの狙いが何であるかを感じ取れるようにする、これらが3原則になります。

⇒ この項続きます。

⇒[無理をしないで成果を上げる:社内教育の方法 その1

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