■マニュアル作成の指導者のいない組織:操作マニュアル講座を終えて

 

1 指導者の不在

操作マニュアル講座を行ってきました。受講者の半数以上の人が、実際に操作マニュアルを作ったことがないということでした。作ったことがないと言っても、一部を修正したこ
とがある人もいましたから、半数くらいの人が関わってきたということでしょうか。

さらに、職場にマニュアル作成を指導してくれる人がいますか…とお聞きしました。どなたも手を上げません。職場に指導する人がいないのです。2010年ころ一部では、組織にマニュアルを指導する人がいないので、指導者を養成したいという話が出ていました。

マニュアルを作成する人を養成しようという思いが単発的に起こっても、組織が継続して取り組むべき大問題とは思われていないのかもしれません。しかし毎回、参加される方の中に、問題意識の高い人がいらっしゃいます。今回もそのことが確認できました。

 

2 問われる業務システムの利用法

1980年代、90年代に日本の産業を支えていたのは自動車と家電でした。家電業界では取扱説明書が必要になります。この業界で取扱説明書を作る指導者がいないということは考えにくいことでした。しかし今や、家電業にかつてほどの元気がありません。

2000年を過ぎると、家電の取扱説明書よりも、パソコンで使うアプリケーションの操作マニュアルが重要になってきました。パソコンのアプリケーションの説明書がたくさん出版されたのはご存知でしょう。執筆者は製品の作成者ではありませんでした。

その後、業務システムに関連した操作マニュアルが作成されるようになってきます。ここで作られる操作マニュアルは2種類です。システムを作る側が提供する標準的なマニュアルと、利用者が自社で使うときのマニュアルの作成がなされました。

ユーザー側が業務システムをどう使うかということがとくに問題になります。組織の業績に直結するのは、どうシステムを利用するかということです。各組織で利用の仕方を検討し、それをマニュアル化することが大切なことに違いありません。

操作マニュアルの作成者が重要な役割を担います。簡潔で使いやすい操作マニュアルがあると、業務自体が効率化するのは、たいていお分かりなのです。ところが作成を指導する人がなかなか養成できていません。まだマニュアル作成を重要視していないようです。

 

3 操作マニュアル作成の効果

組織で業務と業務システムの利用の関係を検討すること自体、あまりなされていません。業務システムを作る際には、たいてい「今後、こうしたい」という希望を出します。しかし、どうすれば、それが実現できるかまであまり詰めずに、システムを発注しがちです。

希望も含めた予測をもとに、今後このくらいの処理ができるシステムが必要だろうという発想が根強いように思います。そうした発想では、業務システムの利用をどうするかの詰めが甘くなりがちです。操作マニュアルの作成まで想定することは厳しいのでしょう。

業務システムをどう使ったらよいのか、今後、操作性まで含めて、どういうものにしていくべきか。実態に合わせた要望が出せるのは、業務システムを明確に意識した場合です。操作と効果を記述しようとすることによって、システムを意識することになります。

操作マニュアルの作成の効果は、対象の明確化にあります。今後おそらく、業務システムをはじめとした製品やサービスのの操作マニュアルを作ることが重要視されることと思います。「組織に作成指導者がいない状態は正常ではない」という意識が必要でしょう。

 

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