■文書作成のイメージ作り:操作マニュアル作成講座を終えて

 

1 受講する人に「初心者」が増加

操作マニュアル作成講座を行ってきました。参加者がじょじょに変化しています。今回の場合、作成経験の浅い人がやや多かったかもしれません。半数近くが操作マニュアルを作ったことがないとのこと。冊子のマニュアルを作った人は一人もいませんでした。

前回の講座のときから「初心者」が多い傾向はみられました。突然の変化があったとは思いません。しかし2年前に比べるとかなりの変化だと思います。さらに言えば、講座とは別のご相談や5年前の講座と比べると、大きな変化になってきていると言えそうです。

5年前ならベテランと言われる人が、上司から講座を受けるように言われて参加するというケースが必ずありました。講義を受ける必要性をご本人は感じてはいなかったはずです。自分の方法を主張して、それと違うことを言ったと批判する人がいたものでした。

いわゆるベテランが自分流のつくり方をしていて、上司がうんざりしている図式がありました。その人たちは講座を受けたくらいで自分流を変えることなどなかったでしょう。そうした10年を超える担当者が、その後だんだんいなくなってきたのかもしれません。

 

2 松下電産の厳しい取り組み

今回の講座でもそうでしたが、職場に指導してくれる人がいなくて困るとおっしゃる方がいます。文書作成の指導者がいないのは心細いかもしれません。しかし自分で考える契機になります。大切なことは、何とかしようという気持ちではないかと思います。

1980年代、日本企業の輸出する家電製品には競争力がありました。一部の人が日本叩きをしたくらいの強さでした。しかし問題になったことがあります。取扱説明書がわかりにくかったのです。これは言い訳できないことでした。本気で取り組む必要がありました。

『マニュアルはなぜわかりにくいのか』に松下電産(現 パナソニック)の取り組みが報告されています。松下電産は取扱説明書の質が悪い場合、製品の出荷を認めない制度を採用しました。こうした厳しい要求のおかげで、取扱説明書の品質が一気に向上しました。

松下の取り組みのおかげで、日本の取説の水準全体も上がりました。このケースで大切な点は、組織が本気で良いマニュアルをつくろうとしたら、その組織のマニュアルの質は上がるという点でしょう。担当者が本気で工夫していけば、成果は上がるものです。

松下のケースでもおそらく、当時の職場に指導者が十分いたわけではないでしょう。しかし何とかしなくてはと、本気で取り組めば何とかなるものです。逆の言い方をすると、自分たちで苦しみ抜いた後でないと、なかなか他人から学べないということでしょう。

 

3 誰に対してのマニュアルなのか

製品やサービスなどが多様化した現代では、どこかの操作マニュアルを雛形にして、そのまま真似しようとしてもうまく行かないでしょう。他人から学ぶためにも、まずは自分で苦労してみる必要があります。ではどうしたらよいのでしょうか。

講座では午前中の最後に、それまでの説明を参考にして、自分の作りたい操作マニュアルのイメージを記述していただく時間を10分ほど取りました。次々記入していく人と、数行で終わる人がいて大きな差になりました。切実さが影響するのかもしれません。

どういうものを作りたいのかがはっきりしてきたなら、操作マニュアルに限らず、参考になるものが見つかります。さまざまなものから、作り方のヒントが得られるはずです。作りたい文書のイメージを具体的に記述できるかが重要なポイントだと言えるでしょう。

まだ操作マニュアルを作ったことのない人でも、イメージは作れます。それを徐々に明確にしていくプロセスが必要です。誰に向けて作成するのか、そのためには、何をポイントに記述するのか、それをどういう形式で記述していくのか、これらを決めていきます。

ここで一番重要なのは、誰に対してのマニュアルなのかという点です。どういうユーザーであるのか、その人たちはどういうものなら使いやすいのか、そういう発想で自分なりのイメージを作り、それを具体化していくことです。ここが出発点になります。

 

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