■図解の原則:図に向いた内容を選ぶこと

 

1 図解に向いていない内容

先日、図解講座がありました。テキストを作ったり操作マニュアルを作ったり、パンフレットを作ったりするときに、前提にしていることを中心にお話しする講座です。わたしからすると特別なことではありませんが、一般の図解の本などで言われていることと、違うところもあるようです。

受講くださった方の中に、こういう話は聞いたことがなかったけれども、何となくそんな気はしていたと言ってくださる方もいました。一番大切なことは、図にする価値のあるものだけを図にすべきである…ということです。何でも図解にすべきではありません。図に向いていないものもあります。

久恒啓一・樋口裕一共著の『図解vs文章』という本に、久恒の「図解派の宣言」が書かれています。[文章には書き手自身がよくわかっていなくてもごまかすことが出来るという特徴があり、読み手の側からの誤解と曲解にさらされるという危険があります][しかし、図解は全体像と部分同士の関係が表現されているため、事柄の本質が一目で理解できる点が特徴です。そして、自分も他者も深い議論へと発展していきます]とあります。

本当かどうかは、久恒氏のお作りになった図を見ればわかります。p.27で「文章読本の流れ」を図解にしています。図解に向いていないものを図解している例です。

谷崎潤一郎の「文章読本」の内容が、「文章の条件」とくくられて、その中に「わからせる」「長く記憶させる」という語句が丸で囲まれて並んでいます。谷崎の「文章読本」がこれだけで表現できだと思っているのでしょうか。いくらなんでも内容がなさすぎます。

 

2 図のほうが分かりやすいという誤解

前記の本に「寺島実郎氏の多摩大学での講義を図解にしたもの」もあります(p.31)。この図で講義の内容が理解できるようになるとは思えません。また、朝日新聞の社説を図にしたもの(p.84-85)を原文なしに見てもらって、どんな内容であるか答えてもらったことがあります。当然のことですが、わかるわけないと放り投げられました。

お聞きした二人とも、文章のほうがわかりやすいと言うばかりか、文章を読んだ後にこんな図はいらないと言い切りました。当然の感覚だと思います。図解にするのにふさわしい内容だとは思えません。これを見ると、受験予備校のテキストのことを思い出します。この種の図が流行ったことがありました。

図にすると分かりやすくなるという誤解は、かなり前からありました。ある時期から図のたくさん載る受験対策用テキストが多くなってきました。そのほうがわかりやすいと思う人がいて、受け入れられたことがありました。しかし、その種のテキストで勉強すると理解が進むなどということはありません。試験に受かりやすくなるわけではありません。

 

3 物事を単純化するリスク

かつて上田惇生先生に、ドラッカーの『抄訳 マネジメント』の章ごとについていた「まとめ」をどうして『エッセンシャル』版でなくしてしまったのか…とお聞きしたことがあります。章の初めについていたものは、内容の構造を示す「構造メモ」のような形式のまとめでした。図解よりも、わかりやすいものだと思いました。

上田先生の答えは、ドラッカーが内容を図式化するのを嫌がるからやめた…というものでした。ドラッカーは図解が嫌いなだけでなくて、それ以前の図式化の発想が嫌いだったようです。実態はそんなに単純じゃないという発想があるのでしょう。内容の安易な単純化は、内容自体を毀損することにもなります。

『AERA』の2012年2月27日号に「パワポバカになるな」という記事が出たことがありました。やっとパワーポイントの問題点が表にでたと思って、印象に残っています。記事の中でパワーポイントの問題点として挙げられていたのは、以下の3つです。

(1) 物事を単純化し、不確定要素を確定要素としてしまう
(2) 数字に見せかけの力を与えてミスリードする危険
(3) 途中で質問しにくく、何がなんだかわからないまま話が進んでいく

強引な論理で話を進めてしまうリスクがあるということです。何かを考えるときに絵や図を使って考えることは意味のあることでしょうが、あまりに物事を単純化してしまうと、かえって本質がつかめなくなります。

定量化されている事柄など、図解に向いていて、上手に図解したら効果的なものはたくさんあります。図解にするなら、図に向いた内容を選ぶべきであるということです。これが原則になります。

 

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