■古い業務マニュアルの概念:考え成長する業務環境をつくるには

 

1 マニュアルに対する古い認識

前回宅配について書いたときに感じたことがあります。『小倉昌男の人生と経営』を読みながら、マニュアルについての考え方がずいぶん古いなあということでした。肉体労働のマニュアルを前提にしているようです。よくあるように、全面否定に終始します。

逆に、業務マニュアルを再定義して積極的に活用すれば、問題が解消されるのではないかと思われることもあります。当然でしょうが、小倉の業務のとらえ方自体、原則に沿ったものです。「自分の頭で考えよう」という項目で、分業の問題点を指摘しています。

会社で働くということは、全体の業務を複数の人間で分担して行うということだ。会社の規模が大きいほど、通常は分業化が進み、個人が受け持つ仕事だけを見つめていると、全体が把握できず、自分はいったい何をやっているのかが、わからなくなってしまう。また、それを考える必要性も感じなくなっていく。

 

2 不備のあるマニュアル

小倉は分業の問題を、マニュアルに絡めて言います。[自分の頭で考えなくなり、意味も分からずに指示されたことをマニュアル通りに行うようになる可能性がある]。自分の頭で考えるために、業務の目的を提示する必要があるのですが、小倉の考えは逆です。

マニュアルの説明に対して、「なぜこういうやりことをするのだろう?」「どうしてこういう決まりがあるのだろう?」といった具合に興味を持って考えてみる。そこに思いのほか深い意味があったりすると、仕事への意欲がわいてくるきっかけになり得る。

業務マニュアルに、業務の目的を書いておかなくてはいけません。それがないのは不備のある業務マニュアルだといえます。業務の目的が書いてあるからこそ、それを実現する方法の改善がしやすくなります。現状の業務よりも良い業務が思いつきやすくなるのです。

不備のある業務マニュアルに対して「疑問を追及して意欲を高める」(項目名)ようにというのは過剰な要求です。[会社のルールや原則を確認し、これをしっかりと守ってほしい]と小倉は書いています。ルールや原則がなぜあるのか示さなかったのでしょうか。

 

3 組織の憲法である業務マニュアル

言われた通りに行う業務は、少なくとも日本ではどんどん少なくなっています。それでは付加価値がつきません。自分たちで考えることを促す業務マニュアルが必要です。その時の前提があります。自由でないと創造性が発揮されません。社員の自由が必要です。

そのとき業務マニュアルが重要になります。「業務マニュアルを作る価値」において、業務マニュアルを憲法になぞらえて記述しました。憲法というのは、強大な国家権力が濫用されないように法の縛りをかけ、国民の権利を守ることを目的とするものです。

組織が社会に存立する正統性の根拠は、組織が社会に役立つ存在であることです。組織がいい人材を集めて、付加価値をつけていくためには、組織が構成員の能力を高めることを示さなくてはいけません。それが組織の憲法たる業務マニュアルだといえます。

小倉の言うことの素晴らしさと同時に、マニュアルへの見当はずれな言及は、マニュアルを古い概念で捉えていたためでしょう。業務マニュアルは単なる社員への要求項目ではなく、社員が考え成長する業務環境を作り上げるためのものです。再定義が必要なのです。

 

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