■プロジェクト思考を重視したマネジメント:事業の再定義

 

1 マネジメントの成立と変化

マネジメントは、大きなイベントごとに変化してきました。マネジメントが独立した体系と認識されたのは、第二次大戦後のことだと言われています。「ネジメントを初めて体系化した書物」と言われるドラッカーの『現代の経営』の出版が、1954年のことでした。

ドラッカー自身『ポスト資本主義社会』(1993年刊)で、[マネジメントは、第二次大戦の経験と当時のアメリカの産業活動を通じて発見された。それが広く受け入れられるうえで、1950年以降の日本の産業活動が重要な役割を果たした]と書いています。

ただ1950年代の経営管理者とは「他の人間の働きに責任を持つ者」でした。それが1980年代以降、「知識の適用と、知識の働きに責任をもつ者」に変わってきました。[このような定義の変化は、知識が中心的な資源とみられるようになったことを意味]します。

 

2 マネジャーからリーダーへ

経営管理者がマネジャーと呼ばれ、人の管理が中心的な役割だった時代から、リーダーと呼ばれ、業務の管理が中心的な役割になる時代に変わりました。[知識が単なるいくつかの資源のうちの一つではなく、資源の中核になったという事実]が重要です。

ビジネスの世界では、スピードが大切です。ドッグイヤーという言葉が1990年代に、しばしば使われました。IT技術が飛躍的に進歩して、すべての仕事が急速に変わっていくようにも見えました。しかし人間が同じスピードで変われるはずはありません。

マネジメントを変える必要があります。[土地、労働、資本は、制約条件でしかな]く、[効果的なマネジメント、すなわち知識の知識に対する適用が行われさえすれば、他の資源はいつでも手に入れられる]のです。よき変化を利用するマネジメントが必要です。

 

3 事業の再定義と業務の記述

IT技術はあいかわらず急速に進歩しています。業務の構築のためには、業務システムを上手に活用することが必須の条件です。ところが業務の仕組みを上手に構築できないと、業務システムを上手に利用することができません。業務の記述が鍵になっています。

ここで大切なことは、マネジメントの思考をプロジェクト思考にしていくことです。業務システム自体、専門家に言わせると寿命は5年程度だとのこと。技術の進歩を反映させるだけの改変では、もったいないでしょう。「効果的なマネジメント」でもありません。

業務がプロジェクトならば、期限がきたら現状より成果を上げる業務に再構築することが求められます。これがリーダーの役割でしょう。「企業永続の理論( The Theory of the Business:1994 )」でドラッカーは、事業を見直す期間を3年としていました。

事業を再定義して、目的と目標をもう一度確認する必要があります。現状の業務をゼロベースで見直し、新たに構築するということです。業務を記述することが、そのための基礎になります。小さな領域からでも、業務を記述していくことが必要だと思います。

 

*文中の『ポスト資本主義社会』の訳文は、『プロフェッショナルの条件』所収の「ポスト資本主義社会への転換」から引きました。

カテゴリー: マネジメント パーマリンク