■ノウハウをどう伝えたらよいか:村上信夫の方法 『ニッポン人の西洋料理』

 

1 教え方のうまい村上信夫

帝国ホテルの料理長だった村上信夫は、フランス料理のシェフとして日本にフランス料理を普及させた伝説的な料理人です。NHKの「きょうの料理」の講師としても有名になりました。日本の家庭にプロの味を広めた人といわれます。教え方が上手な人でした。

この人が雑誌に連載をしたものが『ニッポン人の西洋料理』という本になっています。<肩の力を抜いて『CLASSY』の読者のために、西洋料理の基本を教えてください>と言われたそうです。村上が実際に料理をしながら話をしていき、それをまとめています。

一般向けの料理の本として、とびきり優れた本になりました。プロの技をどうやって一般の人にわかりやすく伝えるのか、そのすばらしい事例になっています。料理を作ることは仕事をなすことです。料理の本は業務マニュアルの一種というべきでしょう。

 

2 定量的に示し必要なら理由をつける

村上の本は、語り口調をそのまま残した記述になっていて、わかりやすい説明になっています。話をまとめた編集部の人が優秀でした。最近のレシピに比べると、高レベルの内容かもしれません。そうした内容をレベルを落とさずに、基本から話をすすめています。

みなさんが日頃おなじみのコロッケもハンバーグも、もとをたどればれっきとした西洋料理です。私のノートにもこれらのレシピがきちんとのっています。では、この静養の味をどのように加減のすれば熱いご飯の食卓にのせられるか。肉の選び方、炒め方など基本からゆっくりとお話いたしましょう。

コロッケの作り方からはじまっています。ジャガイモの種類は問わないが、<春先と秋口に出る新じゃがはコロッケには向きません。水分が多いのでべちゃっとして、ほっくりいかないんです>とあります。先に条件が示され、それにつづいて理由が示されます。

挽き肉について<脂肪が15パーセントくらい混じっているものが具合がいいですね>という言い方をします。15パーセントという具体的な数字があるため、定量的にわかります。ジャガイモの厚さを<8ミリくらいに揃え>と、この場合も数字にしています。

 

3 料理を事例にした説明法のテキスト

村上は定量化することで、料理をなるべく正確に再現できるようにしています。ハンバーグ用の肉も脂肪が15パーセントくらいがよく、<赤味ばかりでは食べたときになめらかさが出ないんです>と、必要に応じて、なぜそうすべきかの理由を語ります。

料理を事例にした説明法のテキストのようです。材料の選び方、準備の仕方を説明する場合、定量的に正確に示し、必要に応じてその理由を語ります。さらに作り方のポイントがどこにあるのかを示しました。こうした説明の方法は、24品を通してのことです。

コロッケなら、ジャガイモのゆで方が大切です。<こつは五つあります>という示し方をしています。こうした形式の記述なら、注意すべき点がチェックしやすいでしょう。ここでも、なぜそうするのかの説明を加えます。ハンバーグの説明でも、同様です。

<精製塩は本来食卓用ですから、料理には使いません>といった情報を含め、語られる内容は他の料理本を圧倒しています。村上のレベルが高かったのはもちろんですが、それを上手にまとめているの が見事です。ノウハウをどう伝えるかの模範といえるでしょう。

 

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