■アイデアが出てくるとき:思考を刺激する方法

1 アイデアの出し方:斉須政雄の方法

今年は何をしましょうか。そんな思いがわいてきます。何人かの人たちと、いくつかの企画について検討中です。こういうとき、いいアイデアが出てくるかどうかが勝負になります。どういうときにアイデアが出てくるのでしょうか。そんなことが気になります。

ヒントになりそうな話がありました。『ゴシップ的日本語論』所収の「思想書を読もう」で丸谷才一はアイデアの出し方について語っています。創造的な料理を発明するモーツァルト型シェフである斉須政雄のアイデアの閃き方を、丸谷は一筆書きしました。

<他の職業の人に接して面白いなと思ったら、その人が書いた自叙伝やその職業の人の伝記を読む。すると新しい料理のアイデアが閃く>…と丸谷はエッセンスを示します。斉須は『調理場という戦場』という魅力的な本を書いています。そこに詳細はあります。

 

2 丸谷流「アイデアのつくり方」

丸谷は斉須の方法が使えるものであることを、ジェームス・W・ヤングの『アイデアのつくり方』を読むことによって確認しています。一般化して言えば、<自分がふだん接している領域とガラリと違う分野の本を読むことが、頭を刺激するらしい>ということです。

丸谷は本の中核となるものを一言にして取り出しています。お見事です。『アイデアのつくり方』の主張を一言にすると、<広告のアイデアは事実と事実のあいだの関連性を探るのがコツであって、広告関係の本は読むな、社会科学の本を読めと言う>となります。

ヤングの本をお読みになった人なら、ちょっとズレがあるのに気づくはずですが、丸谷流の一言まとめは参考になるはずです。本のエッセンスがまとめられるのは、理解した証でもあります。丸谷の一言は、実行可能なまとめになっていて、読書メモの模範です。

 

3 「書物中心から自己中心へ」という発展

目的を決めて、その関係の本を読んだり、情報を集めたりするだけでは、飛びぬけたアイデアは出てこないのかもしれません。違う分野から学ぶことは、ビジネスの世界でもあることです。アパレルのZARAがトヨタ自動車から学んだという話は知られています。

アイデアを出すのに、本はある種の触媒になるのかもしれません。そうなると正確な読みばかりが要求されるのではなくて、自分に引き寄せた読みも必要になるのでしょう。『本はどう読むか』で清水幾太郎が言う、<書物中心から自己中心へという発展>です。

正確に客観的に読める段階を経て、次の段階ではその時の関心に基づいて読み、ノートを作っていくことになります。<自己中心の主観主義のノートを作る道へ入り込んでいく>のです。読書がきっかけになって、自分のアイデアが出てくるようになるとのこと。

思いつきはすぐに消えてしまいます。清水は<本を自由に取り扱って、傍線を引き、書き込みをすると、読書から得られる利益が非常に大きくなるのは確実である>と言います。思考を刺激する本を読みつつ、自分の思いつきを書き込んでいく…のはよさそうです。

 

 

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