■業務マニュアルと操作マニュアルの限界領域:作成計画について

 

1 操作マニュアルの作成計画が妥当する分野

先日の操作マニュアル講座で、作成計画を作る演習をしました。そのとき、新入社員歓迎会の開催手順をマニュアルにしたいという方がいました。歓迎会の開催は業務マニュアルの領域というべきです。しかし操作マニュアルの作成計画の立て方で作っていけます。

業務マニュアルというのは、業務について書かれた文書です。操作マニュアルというのは、操作方法について書かれた文書です。このことは当たり前のことに見えます。その通りなのですが、作り方の観点からいうと、何について書かれたかは問題になりません。

このことは、クジラの扱われ方に似ています。生物学的にみるとクジラは哺乳類です。しかしクジラは海にいますから、魚と同じ扱いをしたほうがよい場合があります。実際のところ、経済学的にみるとクジラは魚の扱いになっています。多義的な観点が必要です。

 

2 記述内容に正解があるか否か

操作マニュアルと業務マニュアルを作るうえで、一番意識しなくてはならないことは、操作と業務の機能的な違いです。操作には正解がありますが、業務には正解がありません。決定的な違いです。いわば哺乳類なのか魚なのかという生物学的な違いにあたります。

業務の場合、達成すべき目標はそんなにころころ変わりません。変わるのは達成方法です。ある程度高度化した業務であるならば、状況に応じて様々なバリエーションが出てきます。すべてを記述するのは実際的でありません。当事者が考える必要があります。

当事者が考えるときに判断基準が必要です。基準の指針がないと自分ルールで不安定な判断を行うリスクが生じます。そうならないように、業務マニュアルに判断基準などの指針が必要になります。業務手順をステップごとに記述するだけでは、内容が不十分です。

 

3 規格業務の記述は操作の記述と類似

手順を記述するだけで足りる業務というのは、決まった手順以外の方法を考えなくても問題が生じない業務だといえます。誰でも同じようにすれば、同じ効果が出て、それで十分な業務です。すべての業務がこれでは困りますが、こうした領域はたしかにあります。

高度な業務でなければ、かえって業務のステップを一律に固定してしまったほうが、効率的な場合があります。誰がやっても安定的に同じことができるようにする「業務の標準化」という手法がとられることになります。単純な作業や手続き中心の業務です。

この場合、その業務には実質的な正解があります。本当は違う作業や手続きでもよいでしょうし、細かいところに違いはあるのでしょう。しかし大枠に問題は生じません。こうした規格に沿った業務であるならば、操作手順と同じ扱いでよいことになります。

一年に1回の新入社員歓迎会の準備なら型通りで十分ですし、そのほうが効率的でしょう。こうした規格業務の場合、操作マニュアルの作成計画を立てる方法がそのまま使えます。もちろん歓迎会でなされるスピーチも余興も、型通りということにはなりません。

 

4 付記:まとめると…

業務を標準化するということは、このやり方に固定するということですから、「正解がある」のと類似の状況になります。業務の標準化ばかり進めてしまうと付加価値がつかないのでよくありません。しかし標準化したほうが効率がよくなる業務もあります。

不可欠だけれどもあまり価値を生まない業務ならば、効率化が重要です。この場合、効率化した決まり・手順を書くことになりますから、正解のある操作方法と類似した内容を記述することになります。これなら操作マニュアルと同じ作り方で問題ないでしょう。

ただ操作マニュアルには機能をアピールして使ってもらう別の目的がありますから、作り方の形式は同じでも、完成形は多様な姿になります。高度な製品・サービスの操作マニュアルを作るにはマーケティングの発想などが必要です。作成の難易度は高くなります。

 

 

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