■顧客の創造と前提の変化:最近の相談から感じたこと

 

1 モノ作りから客作りへ

啓蒙思想家のなかでもホッブズとロックの考え方に大きな違いがあることを、福田歓一は『近代の政治思想』で論じています。ホッブズの場合、富の総量は増えないという考えを前提としましたが、ロックは人間の労働によって富の総量が拡大すると考えました。

前提に違いがあると、そこから出される結論も違ってきます。ホッブズの前提なら、人間の集団は富をめぐって争うことになると考えてもおかしくはありません。しかしロックのように富が増やせると考えるなら、富を増やすことに集中するほうが合理的です。

生産によって富が増大することは経済の発展によって裏づけられました。ロックの前提が正しかったのです。ニーズに合わせたモノ作りは、各国で発展しています。さらに時代が現代になると中核的活動は、モノ作りから客作り(顧客の創造)へと変わってきました。

 

2 マーケティングとイノベーション

顧客の創造という発想は、市場を作り出すのが企業であるという洞察から生まれたものでしょう。こうしたコンセプトを示したのが1954年の『現代の経営』におけるドラッカーでした。現在進行形の大きな変化を捉えた見事な洞察が、その後の前提となっています。

必要なモノの欠乏を埋める以上に、もっと高品質なものを提供することが市場を拡大していくということになります。栄養摂取は食事の前提条件ではありますが、それが満たされたならおいしい食事がほしくなります。チャンスを掴んだ企業が市場を拡大しました。

このときのポイントは、自分たちがどの分野で活動するかを決めるマーケティングと、それまでにない新たな価値を生み出すイノベーションをどう行うかということでした。これが企業活動の中核となるテーマです。このテーマの狙いどころが変化してきています。

 

3 洗練さやシンプルさを求める源泉

ニーズに応えて欠乏を埋め、さらに品質管理を進めてよいものを作りだし、その中で標準をとった企業が大きな富を占めてきました。欠乏を埋めることは今後も求められるでしょうし、標準的なプラットフォームが必要とされる分野もなくならないでしょう。

それとともに、標準化とは違った多様性への対応が必要になっています。おいしい食事が食べたいのは人間の自然な感情ですが、それをあえて食べない人も出てきています。自分の健康を考慮する人たちにむけた対応が求められています。そこにチャンスがあります。

健康への考慮ということの背景には、自分のもっている本来の能力を生かしたい、伸ばしたいという感情があるようです。自分のもつものを粗末にしたくないという感情が、欲望の拡大を抑えて、洗練さやシンプルさを求める源泉になっているようにみえます。

欠乏の解消、楽しみの提供から、生き方の問題へと変化しているようです。日本限定の現象ではなさそうです。どうすればよいのか、よく分かっていません。組織や業務の仕組み自体を変えようという動きは、こうした前提の変化を反映しているとも見えます。

 

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