■属人化をめぐって:業務マニュアルが必要な場合

 

1 業務が属人化すること

今回、新しい機関で業務マニュアル講座を行ってきました。場所が変わると当然のことですが受講者の様子も変わります。学校法人にお勤めの人がいらしたり、全体として他とは違う雰囲気の講義になりました。同時に同じ悩みを抱えていることも確認できました。

いま業務マニュアルの作成が急がれている主な理由は、属人化の傾向が強いためです。組織が業務を十分に把握していないとの危機感があります。高度な仕事を継続して行うとき、優秀な人に頼りがちです。そのほうが成果が上がりますから、属人化が進みます。

重要な仕事が属人化すると、その人がいなくなったら組織が困ります。その仕事を、周りの人が数人ででも引き継げるようにしないとまずい…ということになります。仕事が集中した人も、お休みがしにくくなったり不自由になっています。放置できない問題です。

 

2 良い属人化・悪い属人化

業務の高度化というのは当然のように起きているものですし、今後もこの傾向は続きます。その業務に強みを持つ人に業務をこなしてもらうことは原則として正しい「良い属人化」です。この場合、その人がいなくならないようにという配慮が第一になります。

一方、「悪い属人化」もあります。かなりの部分が標準化できる業務であっても、担当者に丸投げしたまま、十分な評価をしていないときに起こりがちです。この場合、担当者の自分ルールが多すぎて、業務の組み立てを聞き取っても、たぶん役に立ちません。

大事なことは、成果をあげているかどうか確認し、評価して属人化を進めているかどうかということになります。これは業務マニュアルの領域を超えていますので講義では触れませんでした。ただ何となく属人化が進んでしまった例が、かなりありそうです。

 

3 作業手順より業務の指針が重要

悪い属人化を防ぐために、原則として一定期間がきたら異動するケースも見られます。受講者から、前の部署に戻ったら業務がうまく回っていなかったという話がありました。以前を知る人からすると業務の劣化なのに、今の人は違和感がない様子だとのことです。

成果をあげているときに、そのときの仕事の仕方を記述に残しておくべきでした。こういうとき残しておくべき内容は、作業手順が中心ではありません。どういう結果が必要で、そのために気をつけるべきもの、いわば業務の指針が重要です。手順は変化します。

属人化したままの状態ではよくありませんから、一番業務を知る人に聞き取りをしていくことになります。はじめに、なすべき業務の項目をあげてもらいます。一覧を作って、各業務がどういう状態になったら業務の完成になるのかを聞いていきます。

 

4 業務の再構築が必要な場合

やるべき業務の一覧、業務が完了したときの形態、完了までの手順、他部門との関係などの聞きとりができたなら、これらをもとに、業務フローを作っていきます。目的は業務の流れを把握することです。詳細な手順は不要です。見てわかりやすい形式で作ります。

このとき業務フローがきれいに描けるかどうかがポイントです。業務の組み立てがうまくいき、成果を上げている場合、たいてい業務フローがきれいな形になります。そうでない場合、業務フローの描き方が下手なのか、業務がうまく組み立てられていないかです。

きれいでない場合、きれいな形に作り直すしかありません。これは同じ業務ですが、業務を再構築することになります。再構築する場合、①必要な業務一覧、②業務間の関係の整理、③各業務のゴールの状態を確認して、これらをもとに業務を組み立てていきます。

多くの場合、成果をあげている人の仕事であっても、こうした整理をするともっとよい方法が見つかります。業務のように複雑なものは、頭の中にあるだけではよく分からないものです。業務フローを描いて、業務の組み立てを確認する必要があります。

 

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