■マネジメントと文書作成の関係:創造の仕組み

 

1 要素×構造⇔機能

いままで何度かマネジメントと文書のお話をしてきました。マネジメントの知識と文書作成のスキルを別々に考えることが多いのですが、私は両者が関連していると思っています。素材はマネジメント側にあり、モデル化は文書作成の方法と共通しています。

たまたま事業が大きくなっていく過程をそばで見ながら育ってきました。同時に論文を書く様子も見てきました。面白いことにアイデアはほとんどいつも、論文を書く側から事業をする側に流れていました。当然、このとき情報を出すのは事業をする側です。

畑村洋太郎は『創造学のすすめ』で、何かを作るときに要素と構造によって機能が形成されると言っています。部品(要素)を組み立てて(構造)、製品(機能)ができるということです。アイデアが出てくるのも、こういう発想があるからだろうと思います。

 

2 強みをループにすること:モデル化

方針を考えるとき、自分たちが持つ材料を吟味して、自分たちの強みを生かすようにするというのがマネジメントの原則的な考え方だと思います。このとき強みが単独で存在しても十分な力を発揮しませんから、これを生かすためにループにする必要があります。

ビジネスあるいは業というものは、反復することが前提になります。一回性のものではありません。ビジネスの構造がしっかりしていないと、成果が不安定になります。ビジネスモデルが問題になるのも、マネジメントの安定性が問われているからでしょう。

素材をたくさん集めてまとめたなら、何が大切なポイントであるのか、何が自分たちの強みであるのか、当事者はよくわかっているものです。ところが組み立てが不得意な人がいます。論文を書く人は、その訓練を何度となくしていますから、モデル化が得意です。

 

3 アイデアを生むには記述が必須

大手のメーカーの方から研修のご相談があったときに、感銘を受けたことがあります。何度となく業務改善をやってきたけれども、きちんとそれらが定着してビジネスの基礎になっていくためには、その仕組みが書けないとダメだとわかったということでした。

記述することが基礎になるのは学問ばかりではありません。ビジネスでも同じです。マネジメントの判断というのは、もちろん書くことではありませんが、考えを明確にするのに記述が必須になります。アンディ・S・グローブも書くようにすすめていました。

判断の過程で記述することは、思考を整理し洗練させるのに必要な過程です。どうしたらよいのかを考えるときに、記述の方法がそのまま生きてきます。要素を選び出すこと、その要素を組み立てることが、機能を生み出すこと創造することにつながります。

ヤングが『アイデアのつくり方』でいうとおり、新しい考えというのは、素材の新しい組み合わせだということになります。どうやって考えるのか、どうやって組み立てるのかという練習は、文書作成の練習そのものです。意外に盲点になっている気がします。

 

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