■専門職の営業マニュアルについて:業務マニュアル各論

 

1 属人化を避けるべきか

業務マニュアル作成講座を行ってきました。よい質問をいくつもいただきました。中には講座の範疇を超えていそうな質問もありましたが、それらも興味深いものでした。今回は業務マニュアル関連の質問に関して、内容を一般化して、やり取りをご紹介します。

専門職からなる営業部門をもつ会社で、営業マニュアルの作成を担当する人からの質問です。営業の人達はプロ化して成果をあげています。簡単にその方法が真似できなくて、属人化の著しい状態です。こういうとき、どういうマニュアルを作るべきでしょうか。

従来から行われがちな手法は、属人化を避けるものです。各人の特色をある程度認めながらも、標準化した形式を作ろうとします。一定範囲内で、自由な営業方法を認める形式です。しかしその方は、講義を聞いてこれはまずいと思ったようです。その通りです。

 

2 専門職における「よい属人化」

付加価値の高い業務の場合、飛びぬけた専門職の人達の代わりになる人など、簡単に見つかりません。その人達がいなくならないように、居心地のよい職場を作るほうが実際的です。プロに向かって、こう営業するようにと指示が出せる人など例外でしょう。

専門業界向けの営業ですから、各業界向けに調整して、その人のキャラクターをも生かした営業が出来上がっています。それを属人化しない妥当な形式に変えて、成果を上げるようするのは難しいことです。外部から営業方法の制約が与えられたと感じるはずです。

実際、属人化を気にしすぎて専門職のやる気をそいでしまった事例がいくつかあります。属人化がよくないという発想は、標準化がよいという発想と表裏一体です。専門化や付加価値化が進めば、属人化されるのが当然です。いわば「よい属人化」といえます。

 

3 成果のあがる業務マニュアル

それでは、こうした専門職に対して、どういう業務マニュアルがあればよいのでしょうか。まずは営業の品質を重視する旨の規定が必要です。営業が業務のエンジンになりますから、その重要性を指摘するとともに、営業の質の指針が必要になります。

何を成果とするかというときに、単純に数字が成果になるわけではありません。組織として望ましい営業の品質が必要です。この点、部門の責任者であるなら十分にご存知でしょう。品質を明確に定義できたなら、営業成績の適切な評価が可能になります。

さらに適切な評価の下で成果をあげた人を評価・顕彰することが重要です。報奨金だけでは不十分です。ドラッカーは『未来企業』で言います。<花形セールスマンの生産性をさらに向上させる最善の道は、セールスマン大会で成功の秘訣を語らせることである>。

どういう方法で営業を行ったのか成功した人に発表してもらい、内容を営業マニュアルに反映させていきます。自分達が指針に沿った方法を形成していくなら、反発も少なく成果もあがるはずです。成果のあがる業務マニュアルでない限り、きちんと使われません。

 

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