■説明文の一文の文字数について:リズムと単調さの関係

 

1 一文を40文字以下に…との見解

ときどき講座のあとの質問で驚く話を聞くことがあります。操作マニュアルの説明を記述するとき、一文が40文字を超えてはいけないという決まりがあるので、それを守るようにと言われた…という話がありました。まじめな方らしく、困っていました。

ときどき超えてしまうのですが、どうしたら文を短くできますかという質問です。なんで40文字を超えてはいけないのですかとお聞きすると、どこかの講義でそう言われたということでした。そういう決まりになっていますという説明だったようです。

これが決まりですと断定されたら、それを信じてしまうものなのでしょうか。根拠を聞かなきゃダメですと伝えました。実際、40文字を超えても問題はありませんし、そのほうが良い場合もあります。記述の文字数に関して、何文字以下という決まりはありません。

 

2 文の文字数に関する目安

たしかに一文の文字数が多すぎると、文意が取りにくくなるおそれはあります。その基準は80文字くらいでしょう。一行が40文字くらい、それが二行になると文の最初の部分の記憶が消え始めます。その点で一文80文字という数字は知っていて損のない目安です。

しかし、文字数を基準にして文のわかりやすさが一律に決まることなどありません。80文字を超えても文意のとりやすい文はあります。80文字を超えたら、わかりにくくなりがちなので、説明文を書く人はチェックしたほうが安全だということ、それだけです。

目安では頼りないのでしょうか。40文字の前に50文字以下という制限を聞いたことがあります。この基準を守る人が見せてくれたサンプル文書は、ほぼ40文字以下の文で構成されていました。40文字説がでてくる素地は、この辺にあったのかもしれません。

 

3 文章のリズムを重視する

一文を40とか50文字以下に…という制限つきの説明文はわかりやすいのでしょうか。私は、わかりやすくならないと思います。一文が40文字といった極端な文字数の制限は、かえって文章をわかりにくくさせる可能性があります。文章のリズムの点から問題です。

一文の長さを短くするように制限を加えると、文書全体が短かめの文から構成されることになります。短めの文の連続は文章全体を単調にさせます。私たちはやや長めの文、中くらいの文、ときに短文といった文の長さの変化で文章のリズムを感じとります。

一律に短い文にしたときの文章の単調さは、文末をすべて「です」にしたときの単調さに似ているかもしれません。文章にリズムを与える主な要因は、一文の長さを変化させることと、文末を変化させることだろうと思います。人は文章の単調さを嫌います。

文章のリズム感を養うには、文の長さと文末を意識しながら文章を書くことが必要だろうと思います。リズムということを意識するだけで違うはずです。文章にリズムがあるなら、読む側に単調さを与えず、きちんと読んでもらえるだろうと思います。

 

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