■論文の「正しい書き方」:デカルト『方法序説』の読解事例

1 哲学書から「考え方」を学ぶ

読む価値のある哲学書を4冊あげ、一番にデカルト『方法序説(叙説)』を選んだことがありました。それ以前に、『方法序説』を読んで、<現代人である我々が大きな衝撃を受けるということは、あり得ない>と谷沢永一が書いていることを紹介しています。

デカルトのいう「理性」というのは、木田元『反哲学入門』によると、<われわれ日本人が考えている「理性」などとはまるで違った超自然的な能力>ですから、<思考の大前提がまるで違うのです>。どうしてこういう本を読む価値があるのでしょうか。

谷沢は<『方法序説』の文体を真似る>ために、本格的に『方法序説』を読んでいます。記述が思考に影響を与えていることを十分に意識していたのでしょう。私たちは、価値ある哲学書から考え方を学びます。これに比べたらロジカルシンキングは物足りません。

 

2 4つの原則を読み替える

鹿島茂が『進みながら強くなる』の中で、デカルトの『方法序説』の<「考える方法」を応用>した「正しく考える方法」を提唱しています。デカルトの4つの原則を読解して応用したものです。前提となるデカルトの4つの原則を単純化したものが以下です。

1 すべてを疑おう
2 分けて考えよう
3 単純でわかりやすいものから取り掛かろう
4 可能性をすべて列挙・網羅しよう

<このすべてを疑えという第一原則は、ファクト(対象となる物事、事象、現象)の観察と強く結びついています>。<ファクトを観察することがあらゆることの第一歩>となるからです。鹿島はこうやって原則に絞りをかけています。

第二原則の「分けて考えよう」では、反対に<もっと広く捉えて><「分け方を考えよう」ということ>と読んでいます。「分け方」の方法として、<①対象の観察/②差異と類似の発見/③差異と類似をもとにしたグループ分け>の3ステップを提唱します。

 

3 論文の正しい書き方とは

第三原則は、<論文の構成と深く関わっています>。<説得の技術として、いきなり複雑で難しいことを示すのではなく、まず誰にでもわかるような単純で明確なことから話していく>、<その上に、もう少し複雑なものを乗せる>という説得の順番に読み替えます。

第四原則は、論文の<それぞれの部分で、自分と違う考えの人がいるものと仮定して、その人が立てるであろう反論を撃破してゆく>、<そのときには、考えうるありとあらゆる反論を予想しなければなりません>。これが<不可欠>だということになります。

以上をまとめると、<論文の正しい書き方(=考え方の技術)>とは、<すべてを疑うことから出発して、ありとあらゆる客観的証拠をそろえて検証し、仮説を立てて、ドーダ! まいったか! と結論を述べる>ことだ…ということになります。

重要なのは最初の問いかけです。<最初の問いかけには二種類しかありません。一つは、いままで誰も問いかけたことがなかった、まったく新しい問い。もう一つは、いろんな人が問いかけたけれど確定的な答えの出ていない問い>です。冴えた読解だと思います。

 

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