■文書の標準化について:なぜ標準化が必要なのか、その理由

 

1 社内チームの失敗原因

ここ数年で、文書の標準化のご相談が何件かありました。最近こうしたお話がなかったのですが、少し前にかつて聞いたようなお話がありました。社内チームを作って文書の標準化のための検討をしているのですが、うまく行きません…といった感じのお話です。

業務の変化が早いため、業務ごとに標準の文書フォームにするのは難しいことでしょう。一方、文書の形式がバラバラだと効率が悪くなるという考えも正しい気がします。そういうとき、社内の各部から推薦された人がチームを組んで、文書の標準化が検討されます。

しかし成功した話を聞きません。標準化の基準を作るように言われた場合、公文書用の基準を参考にすることが、しばしば見られます。これが失敗のおもな原因だろうと思います。公務には、ビジネスのような急激な業務の変化などありません。前提が違います。

 

2 実質的な基準が必要

公文書の場合、記述形式を統一することによって標準化を進めています。送りがなの基準や、「、」と「,」の違いなど、ビジネスではどうでもよいことです。それよりも、もっと実質的な基準を作った方がよいと思います。かつての提案を思い出しました。

大手メーカーで熱心に文書の標準化を進めていた会社がありました。権限者が地位の高い人のようでした。窓口になった人は、ただの連絡係という感じです。チームでの協議では限界があるので、まずは選抜チームに対する指導をして欲しいというお話でした。

こちらの提案は、(1)従来の検討案の作成を中止し、外形的基準の大枠のみを作成すること、(2)フォーマルな文章を書く訓練を取り入れること、(3)文章スキルが上がる仕組みを作ること…というものでした。結果として目指す方向が違ったようです。

 

3 文書の実質的内容の共有

文書の標準化が必要だと考えるのは、どんな理由なのでしょうか。標準化の目的がどういうものであるかによって、なすべきことが変わります。文書の標準化を進めるときに、なぜ標準化が必要なのか、どういう姿を目指すのかを明らかにする必要があります。

業務が多様化し、変化のスピードが早くなると、業務作業の標準化自体がリスクになりえます。業務を標準化することによって、付加価値を下げるリスクが生じます。文書の場合でも、単純に「標準化」しただけで、業務が効率化することなど期待できません。

では、なぜ文書の標準化が求められるのでしょうか。実質的内容を明確に記述し、それを共有するために、文書の標準化が効果的だからです。言うべき内容を明確化することの効果を期待しています。例えば、すぐれたアイデアが埋もれないようにするため…です。

メールやSNS用の文章は、当事者の理解に依存するところが大きな、カジュアル化した文章です。広い範囲に正確に伝わる文章にするために、フォーマルな文章にしておく必要があります。それをどんな基準でどんな容器に記述するか…これが標準化の問題です。

 

This entry was posted in 方法. Bookmark the permalink.