■リーダーの役割:目標とすべき方向と程度

 

1 リーダーの役目

『最強国家ニッポンの設計図』で大前研一は、最も重要なリーダーの役目として、<まず「方向」を決めること、次が「程度(スピード)」を決めること>だと書いています。売り上げを1.5倍にする…と数字だけの目標を掲げるのはダメだということです。

<なぜリーダーの役目が「方向」を決めることなのかというと、今の世の中は誰も進むべき方向がわからないジャングルであり、少しでも方向を間違えると地獄が待っているから>です。ビジョンを持って、こちらに進もうと指し示すのがリーダーの役割になります。

自分達のやろうと思うものを、目標にすることが戦略です。その目標には、方向と程度という2つの要素があります。「方向」とは、ゴールを決め、ゴールに達する道筋を示すことです。「程度」とは、目標の評価基準を決め、そのゴールを定量化することです。

 

2 リーダーあるいはエグゼクティブ

リーダーとは、業務を管理する人、ビジネスの方向と程度を管理する人と言えそうです。かつて「マネージャーからリーダーあるいはエグゼクティブへ」に、マネージャーという用語に人を管理するニュアンスがあるため、この用語が廃れていった経緯を書きました。

ドラッカーはすでに1954年刊行の『現代の経営』で、<マネジメントを評価する究極の基準は、事業上の成果である>と書いています。これをもう少し具体的に言うと、「方向」と「程度」において十分な結果が「事業上の成果」ということになりそうです。

ただドラッカーがリーダーという用語を選ばなかったのは、リーダーに「指揮命令」のニュアンスがあるためかもしれません。1993年の『ポスト資本主義社会』に、<知識組織におけるマネジメントの仕事は、指揮命令ではない。方向づけである>と書いています。

 

3 リーダーらしさ

リーダーあるいはエグゼクティブは、業務の方向と程度を決め、それを管理する存在だということになります。つまり目標を管理する存在です。こうした存在が、結果としての数字だけを見ることに対して、何かヘンだと感じるのは当然だろうと思います。

いわゆる成果主義に対する違和感が表明されるのは、結果としての数字、つまり「程度」だけで判断されることに対する、人間本来の感覚による違和感だろうと思います。こういう行動様式はリーダーらしくない、リーダーシップがない行動だということです。

どちらに行ったらよいか、皆がわからない時に、進路はこっちだと示して結果が伴うならば、それこそリーダーでしょう。リーダーシップの「シップ」には「~らしさ」という意味があるとのこと。リーダーらしさを持った人が、リーダーになると言えそうです。

 

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