■ドラッカー The Theory of the Business 「企業永続の理論」を読む

1 事業の定義

ドラッカーの「The Theory of the Business」(企業永続の理論:1994年)はドラッカー晩年の代表的な論文だと言われます。題名がビジネスのセオリーですから、重要な論文なのでしょう。ただ何が言いたいのかよくわからない、という声をときどき聞きます。

この論文は、マネジメントを「いかに」行うかではなくて、「何を」行うべきかについて語っているとのこと。行うべきこととは、組織が前提とする指針を現実に合わせていくことです。組織が前提とする指針を「事業の定義」とドラッカーは呼びます。

事業の定義は、「経営環境・使命・強み」の3つの要素からなっています。何が言いたいのかわからないと言う方は、この3つが具体的に何を示しているのか、よくわからないとおっしゃいます。具体的には、どういうことなのでしょうか。

 

2 「何を」行うべきか

たしかにドラッカーは明確な書き方をしていません。3つの要素は<嘘かと思われるほど単純に見える>とドラッカーは書いています。具体的にどういうことを行っていけばよいのかわかりにくく、抽象的な感じがします。しかし文中にヒントがあります。

第一の環境についての前提は、組織が何によって対価を得るかを明らかにする。第二の使命についての前提は、組織が何を意義ある成果とするかを明らかにする。第三の、自らの強みについての前提は、自らがリーダーシップを維持していくためには、いかなる分野で抜きん出なければならないかを明らかにする。

これを意識した上で、3つを見ていく必要があります。経営環境についての記述は、<社会とその構造、市場と顧客、そして技術の動向についての前提である>とあるだけです。これ以外に上記の引用部分の説明と、IBMとGMの事例が示されています。

勉強会でも、経営に関わる方が具体的に「何を」行うべきなのかを気にしていました。ここは文字通り、現実の環境下で、何によって対価を得るべきかを考えること…でしょう。つまり、どの領域・分野で収益を上げたらよいのかを考えること…です。

 

3 この論文の趣旨

経営環境についての前提が、収益を上げる領域・分野を明確にすることであるなら、具体的に何をしたらよいのかわかるはずです。経営環境についての問いかけが具体的にわかれば、使命、強みについても、どういう問いかけなのかがわかってきます。

組織の使命を考えるとは、<何を意義ある成果とするか>ということでした。使命を考えることは、基準を決めることです。どういう状況(過程と結果)ならば成果ありと言えるのかを考えて、達成あるいは問題解決の基準を決めること…になります。

強みの前提を考えるとき、論文の冒頭にある<アウトソーシングとリエンジニアリング>が有効だとの記述がヒントになります。業務は反復しながら発展していきます。使命を達成するために、強みを発揮する仕組み、ループを作ること…が必要だということです。

ビジネスの領域を設定し、成果の基準を決め、仕組みを作る、この3つからなる「事業の定義」を明確にすること。3つが現実に適合し、お互いに関連しあうことが条件です。組織はこれを周知し、検証していくことになります。以上がこの論文の趣旨でしょう。

[→ドラッカー The Theory of the Business 「企業永続の理論」再論

 

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