■アメリカに内視鏡を売り込んだ男の話:大根田勝美『中卒の組立工、NYの億万長者になる。』

 

1 努力が実ってアメリカ勤務

大根田勝美は、水村美苗『本格小説』の主人公である東太郎のモデルになった人です。オリンパスの内視鏡をアメリカで売り、その後、アメリカで最も成功した日本人ビジネスマンの一人になりました。その自伝が『中卒の組立工、NYの億万長者になる。』です。

特別寄稿している新谷弘実との出会いが大きな転機になりました。開腹せずに大腸内ポリープを切除する手術を成功させたドクターです。<最初の5年間、ほとんど1日2時間以上寝たことがなかった>新谷が、大根田のほうがもっと努力したと書いています。

オリンパスの修理部門に配属された大根田は定時制高校卒業のためか、馬鹿にされていると感じます。そこで英語が出来ないのに、1年間で英語をマスターしようと決意して、実際、1年後周囲を仰天させます。これがきっかけでニューヨーク勤務が決まりました。

 

2 成功の裏づけは詳細なメモ

ニューヨークで成果を上げたものの評価はいまひとつ、退社してセールスレップになりました。そのとき新谷ドクターと出会います。新しい手術法に必要な内視鏡が次々売れて、巨額の報酬を得ます。しかし年々契約内容が悪化して、販売契約も解消しました。

努力が報われる「儲けるためのメカニズム」がなくてはいけないと気づきます。大根田はとにかくメモを取ります。何から何までメモをとり、あとで読み直しながら整理していくのです。小さな情報を大切にして、成功した新製品の構想など多くを生み出しました。

その後、ペンタックスと一緒に作った会社を基盤にして、<新製品の開発、新人の教育、営業のサポート、宣材やマニュアル作り。私は毎日膨大な量の作業をこなし続け>ます。その結果、ペンタックスの製品も<アメリカでの基盤を徐々に固めていった>のでした。

 

3 自らカタログとマニュアル作成

大根田は営業カタログやマニュアルを大切にします。カタログを自ら作り、製品のマニュアルを作り直しました。付加価値の高い製品の場合、いまやカタログだけでなく、良質な操作マニュアルが強力な営業ツールになっています。カタログのポイントは以下です。

カタログというものは機能だけを謳えばいいというものではない。どんなところに特徴があるのか、従来の製品や競合商品といかに違うのか。そして新製品を使うことでどのようなメリットが得られるのか。わかりやすく、かつ見た目の美しさやインパクトにも気を遣いながら魅力を訴求していくことが求められる。

カタログに必要な要素は、(1)特徴、(2)他製品との違い、(3)新製品のメリット…の3つです。これをユーザーに対して、(1)わかりやすく、(2)美しく、(3)インパクトのあるように訴えなくてはなりません。一方、マニュアル作成の場合、もう少し大変そうです。

<日本語で書かれたマニュアルはあったが、医師が内視鏡を使う際に参照できるものにするためには、一工夫も二工夫も必要>とあります。日本語のモノは使えないものだったのでしょう。付加価値の高い製品にふさわしいマニュアルが、極めて少ないのは残念です。

 

 

 

カテゴリー: マニュアル パーマリンク