■自己目標管理を実現するための「気づき」

 

1 標準作業を排除する

業務マニュアルとは標準作業を記述するものだ…という認識が常識だった時代、マニュアル労働というのは肉体労働のことでした。この肉体労働という言い方には、頭を使って考えないというニュアンスが強くあります。

こうした働き方の対極にあるのが、自分で目標を立てて自己管理していく自己目標管理の考えです。ピーター・ドラッカーは『マネジメント』で、<自己目標管理こそマネジメントの哲学たるべきものである>と書いています。

なかなか実現しない高い要求だったのかもしれません。しかし、業務マニュアル自体が、標準作業を記述しない方向に再定義されていくなら期待が持てます。業務自体が標準作業を排除する形式になってくるかもしれません。そのとき自己目標管理が中核になります。

 

2 考える邪魔となるもの

具体的に、どうしたら良いのでしょうか。ムダとりを主張する山田日登志は、会社の主要なムダを3つあげています。(1)仕掛け品が停滞しているムダ、(2)繰り返される標準作業のムダ、(3)運搬作業のムダ…の3つです(以下、『気づく力』より)。

繰り返される標準作業とは、<毎回毎回50センチの距離から部品をとるのは、50センチの距離から部品を取る動作の練習にほかなりません。この50センチを30センチに、20センチに縮めようと考え、やってみる。それが仕事であり、ムダとりなのです>…と。

標準作業を守らせようとすると、作業者が自分なりの工夫をしなくなります。新たな方法を考える邪魔になるのです。業務マニュアルに標準作業の記述が並ぶと、自分の頭を使わなくなって作業効率が落ちる可能性がでてきます。まず邪魔を排除しましょう。

 

3 目標を自分で作ること

そのあと、どうしましょうか…? <目標と現実のギャップを理解させることです。このギャップを意識すれば、自然と気づく力が養われてきます>…と山田は言います。仕事を自己管理していくために、目標はどうあるべきでしょうか。

目標は自分で探さないと、気づきは身につきません。経営学では「目標管理」などと言いながら、目標をつくらせないで、気づかない人間づくりが産業社会の中で出来上がっています。

目標作りが必要です。なぜその作業をするのか、現状はどうか、どうやったら成果があがるか、こうした点を確認したら、自分で目標を立てて自分で管理していける制度・仕組みが必要です。これを組織的に作ることが業務マニュアル作成の目的です。

自分で目標を立てるとき、業務マニュアルの記述によって、自分の考えが組織の目的に適ったものであるかどうか判断できる指針でなくてはなりません。組織と個人のベクトルあわせが出来る明確な基準が示せたなら、自己目標管理が可能になっていくはずです。

 

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