■日本語の語順について

 

1 日本語の語順の特徴

日本語は膠着語と言われます。文の要素を糊付けして構成していく言語ですから、語順は様々に動かせます。それでも不安定にならないのは、基盤となるものがあるためです。日本語の文末には、述語を含む部分がおかれるのが標準的です。

日本語の語順のおそらく最大の特徴は、文末に述部が置かれることでしょう。文末の前に置かれる文の構成要素が、比較的自由な語順になるという点も大切な特徴になります。例えば、「今日私は閉館ギリギリの時間に図書館に本を返却することができました」です。

この例文の場合、「返却することができました」という述部の前にある「今日」「私は」「閉館ギリギリの時間に」「図書館に」「本を」という要素の順番は、大幅に変更が可能です。ただ述部以外の語順の緩やかさのために、誤解が生じるケースも見られます。

 

2 私はAさんとBさんに…

しばしば指摘される事例があります。「私はAさんとBさんに会いました」という文はどういう意味なのか、明確でしょうか。助詞「は」のあと、意味が区切られると考えて、「私は」「AさんとBさんに会いました」と考えるのが一般的でしょう。

この場合、「私は」「会いました」が主述関係になって、会った主体者が「私」だということになります。こうした解釈以外の余地がないなら、問題ないのです。しかし「私はAさんと」のあとに意味が区切られる場合もありえます。

「私はAさんと(一緒に)」「Bさんに」「会いました」という意味である可能性も排除できません。簡潔的確な文章がよいという基準で見ると、「私はAさんとBさんに会いました」という文は、あまり的確でないと言えそうです。

 

3 語順は大切な武器

誤解が生じない日本語の表現を考える時、有力な武器になるのが語順です。先の事例を読点で解決しようとする傾向がありますが、あまりよくない方法です。以前、宮脇孝雄のいう「読点の極意」をご紹介したことがあります。

<読点の打ち方次第で意味が変わるようなら、それは下手な文である>というものです。読点ひとつで大きく意味が変わるというのは、リスクがあります。ぱっと見ただけで、誤解が生じない表現があるなら、その方がよいはずです。

語順を変えてみましょう。「私はAさんとBさんに会いました」の2通りの意味はどうなるでしょうか。「AさんとBさんに私は会いました」と「Aさんと私はBさんに会いました」…ですね。語順がかなり自由になる日本語では、語順は大切な武器にもなります。

 

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