■創造の基礎:畑村洋太郎のヒント

 

1 既存のモノを組み合わせた創造

何かを創造しようとするとき、大きく二つの方法があると西堀栄三郎は語っていました。新しい知識を生み出してそれを使う「ラングミア方式」と、要求を解決するために知識を組み合わせる「エジソン方式」の二つです。

全く新しい考えを作り出す場合、偶然性に依存するため、いつまでに完成させるということが難しくなります。そのため多くの場合、既存のモノを組み合わせて新しいモノを作るエジソン方式が優位になります。

既存のモノを組み合わせて新しいものを作るとき、どう手がけたらよいのでしょうか。畑村洋太郎は『創造学のすすめ』(2003年刊)でそのヒントを提示しました。創造とは「要素を組み合わせて、ある機能を果たす構造を作り上げること」と定義しています。

 

2 要素・構造・機能

畑村は、企業でトレーニングを行って成果を上げてきたとのことです。その一番使える中核部分について、2006年刊行の日経BPムック「SEの実力を磨く究極仕事術」で簡潔に語っています。このわかりやすさが貴重です。

世の中のあらゆるモノは、「要素」、「構造」、「機能」という3つに分類できる。自動車なら、ボルトや車軸などの部品が「要素」、部品の組み合わせ方が「構造」である。そして「要素」と「構造」によって、「まっすぐ走る」や「止まる」といった「機能」を実現する。

畑村は、<要素・構造・機能に分類・整理して考えることが重要>と言いますが、その直後に修正が加えられています。<機能に関係する要素を書き出して、どういう構造にすればよいかを図で表しながら考えるべきである>。要素の書き出しがスタートです。

 

3 独自の工夫が必要

畑村自身が、<システム設計では当たり前に行うことかもしれないが>と注記するように、目新しい発想ではありません。システム設計のみならず、文書を作る場合でも、当たり前のことです。

同時に、<これを日々の仕事で意識的に行っている人は少ないと思う>と語っている通りです。それも頭の中で考えるだけでは不十分なのです。<手を使って要素を構造化することが、考える力を高めるコツである>。

まず機能、つまり目的とする達成像を描いて、それを達成するために必要な要素・部品を思いつくままメモして、それを使えるように加工して蓄積していくことが重要です。西堀栄三郎が、切迫感があるほど思いつくものだと言っていた通りでしょう。

要素をどう蓄積していけばよいのか、また要素をどう構造化したらよいか、ここからは清水幾太郎中島聡のやり方が参考になりそうです。ただし創造しようとする場合、基本は同じでもその上に行くために、その人なりの独自の工夫が必要だろうと思います。

 

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