■ビジネスに使える文章術:その条件

 

1 すぐ使える文章術が役立つか

何年か前に、マニュアル作成者による文章術といった本を書きませんか、というお話をいただいたことがあります。しかし、ご要望の本を、私は書けませんでした。よい出版社でしたし、優秀な編集者からのお話でしたので、申し訳ないことをしたと思います。

そのとき想定されていた形式は、よくあるパターンのものでした。「こういうとき、こうすべし」といった項目が何十も並んでいる本です。よろしくない例文のあとに、修正した良い例文が示され、ここに気をつけましょう…という簡単解説がついた形式のものです。

すぐ使えるものでないとダメだ、と担当の編集者はおっしゃっていました。その後お会いした大手の編集者の人も、すぐ使える方式で、ひとまず何とかなってしまうから…とのことでした。この種の文章術で何とかなってしまうのなら、本当にすばらしいことです。

 

2 強い会社の人たちの危機感

実際には、その前から困っているというお話が来ていました。2012年以降です。要求されるビジネス文書のレベルが違うのかもしれません。雑誌の特集で、この会社の文書はすばらしい、と取り上げられる会社の人達からも、ご相談を受けるようになっていました。

強い会社ならではの危機感かもしれません。ビジネス文書で大切なのは、実質的な内容とスピードです。スピードとは、提示のタイミングが早いこと、作成が早いことです。相手にすばやく伝わることも含まれます。そのためには、簡潔、的確な文章が必要です。

簡潔、的確な文章を書くには、どうしたら良いのでしょうか。(1)概念を明確にすること、(2)その概念を全体の中に位置づけること…がまず必要です。内容あっての文章です。ポイントがつかめないと、簡潔、的確にならないのです。

 

3 文章の内容を規定するのは目的

文章を書く前に、物事の理解が先立つと言うべきでしょう。それでは、何を基準に考えたらよいのでしょうか。これは明らかです。文章の内容を規定するのは、目的以外にありません。どんな目的のために書くのか、それを認識することに尽きています。

この文書はどういう目的であるのか、それをもとに、どういう内容を書いたらよいかを選択する必要があります。言うまでもなく、そのとき自分の考えが示されなくては困ります[ビジネス文書の書き方3]。さらに、自説を根拠づける客観的な理由が必要です。

ビジネス文書に関する限り、目的にどう答えるかという点を抜きに、文章術を考えることはできそうにありません。そのとき、相手に伝わる内容であるという点で、検証可能な形式が要求されることになります[ビジネス文書の書き方 2]

 

4 客観化には時間と空間を意識する

根拠づけに、客観的なデータ、客観化した指標を取り入れることにより、検証も可能になります。客観的な指標となるものは、多くの場合、数量化・定量化されます。あるいは、明確な境界線が決まったものです。時間と空間がその中心になります。

時間の場合、「いつ」「長さ」「時系列」などが中心でしょう。空間なら、「どこ」「広さ(大きさ・長さ)」「該当環境(内と外・部門 etc.)」などが中心です。数量を表す場合、絶対値と集計、単位などが問題になりそうです。

ビジネス人が文章を書くとき、目的に合致する内容かどうかを考慮する必要があります。わかりにくい文例を、わかりやすい文に変えることは、全くのムダではありません。しかし、それ以前にしなくてはならない大切なことがある、ということになります。

 

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