■「テイラーの死」:科学的管理から自己目標管理へ

 

1 テイラー『科学的管理法』

フレデリック・テイラーは1911年に『科学的管理法』を書いて、仕事の合理化を提唱しました。経営学者のドラッカーは、テイラーのことを、「仕事が体系的な観察と研究に値するものとした最初の人である」と評価しています。

テイラーの言う「科学的」とは、勘などではなく、実験と検証を行うもののことを指しています。作業をストップウォッチで測りながら、その疲労度を勘案して、作業の適正な所要時間を測定していくのです。

作業を動作に分解して、時間をもとに、作業を検証します。検証を通じて、継続して無理なく続けられる最大作業量を探っていきます。テイラーはこれを「時間研究」と呼んでいます。こうした努力によって、労働の生産性を上げていきました。

 

2 「テイラーの死」こそ現代社会の課題

『現代の学としての経営学』で三戸公(ただし)は、<「テイラーの死」こそ、現代社会の課題である>、<テイラーによって提起され、テイラーによって象徴される問題は、むしろスミスの持つ意味よりはるかに大きい>とも言える、と指摘します(1976年)。

仕事の管理が調査・分析によって分かるようになるなら、経営者はそれを基準に仕事を割り振ることができるようなります。大きな影響を与えたのは間違いありません。しかし、それは標準化の名のもとに、外から基準を押しつけることになりました。

仕事をする当人に、頭を使って考えることは求められていません。決まった仕事を、誰がやっても問題ないように標準化するのです。こうした仕事がしたいという人はまずいないはずです。しかし、まだテイラー・システムの影響が消えていません。

 

3 自己目標管理

まさに「テイラーの死」こそ求められています。ただ、ドラッカーが評価するように、テイラーの手法はすぐれたものでした。仕事の効率化に貢献しました。これを超える仕組みがなくては、ただ批判しても、「テイラーの死」はやってきません。

テイラー・システムの一番の問題は、外から評価基準を設定する点にあったと思います。怠惰な人間が多くて仕事が進まないという問題があったため、その解決策として開発されました。人を一般化して、標準的な評価基準を作り、それを基に管理する手法です。

『幸福論』でのヒルティは、別な方法を提唱しました。怠惰を克服するのに、習慣の力を利用するように言っています。自分で考えて行う仕事がよい仕事であり、そのよい仕事の仕方を習慣にすることによって、怠惰を克服して勤勉さが身につくと言いました。

そのためには、自分で目標を立てて、自分で管理しなくてはなりません。テイラーを評価したドラッカーは、自己目標管理を提唱しました。<自己目標管理こそマネジメントの哲学たるべきものである>…と最大の強調をしています。

もはや外からの管理では、決まりきった規格業務以上の成果は出せなくなってきました。付加価値をつける仕事を行わない限り、成果があがりません。それに気づいた組織から、順次、テイラーが消えはじめています。この流れは、変わりそうにありません。

 

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