■文構造を意識することの意味:日本語のバイエルの手法

1 文構造を意識すること

文章を読むときに、よく意味がとれない場合でも、その文の構造を意識すると、理解できることがあります。たとえばWeb上に、以下のような文がありました。「ような」というのは、そのままではないということです。

14日、県庁で行われた会見で、病院側は、この助教が手術に関し、(1)患者への十分な告知と同意(インフォームドコンセント) (2)院内審査組織への申請 (3)肝機能チェックなどの術前検査-の3点について、極めて不十分だったことを認めた。

この文章の主語と述語は何ですか、と言われれば、わりあい簡単に答えられると思います。主語(主体)は「病院側は」です。述語(述部)は「認めた」となります。問題は、「この助教が…不十分だったことを」までをどう考えるか、ということです。

 

2 4つの道具で分析する

一度慣れれば、簡単なことです。まず、文を分析するときの道具として、4つがあれば何とかなります。①主体(主語)、②述部(述語)、③焦点、④前提…です。この文は、「主体(病院側は)+焦点(…ことを)+述語(認めた)」の構造になっています。

焦点となる部分は、「この助教が…不十分だったことを」です。「ことを」より前の部分が文構造になっています。いわゆる節です。文の中に、文構造(節)が入り込んでいますから、複文であるということになります。そのため構造がやや複雑に感じられます。

「病院側は、認めた」だけでは、何を認めたのかわかりません。それに答えるのが、焦点に当たる部分になります。この部分が文構造になっています。主体は「この助教が」です。「手術に関し」は前提(TPO)にあたります。問題は述部(述語)です。

 

3 文構造のバランスを整える

節内の述部は、「(1)患者への十分な告知と同意(インフォームドコンセント)(2)院内審査組織への申請(3)肝機能チェックなどの術前検査-の3点について、極めて不十分だった」になっています。いささか長すぎるだろうと思います。

日本語は、述語・述部が文を束ねる構造です。述部という言い方をするのは、述語に不可分の要素が結合することがあるためです。これらを一体で述部と考えると、文構造が明確になります。構造が見えてくれば、全体のバランスが見えます。

文全体では、「主体(病院側は)+焦点(…ことを)+述語(認めた)」となり、焦点が節となる複文構造です。焦点内は、「この助教が」+「(1)(2)(3)について、不十分だった」という「主体+述部」の構造になっています。

文構造を意識することによって、文のバランスが意識されるようになります。この文では、節中の述部に内容を詰めこみすぎています。一部の要素を切り離し、「この助教が」という主体を変えたほうがよさそうです。たとえば、以下のようになります。

14日、県庁で行われた会見で、病院側は、この助教の手術前検査が極めて不十分だったことを認めた。(1)患者への十分な告知と同意(インフォームドコンセント) (2)院内審査組織への申請 (3)肝機能チェックなどの術前検査、以上がなされていなかった。

 

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