■業務マニュアルの判定基準:尊敬される業務・組織

1 マニュアル通りの仕事が尊敬されない理由

今月末に研究会で業務マニュアルのお話をさせていただくことになりました。主催者のお知り合いの方には、すでにご連絡が行っているもしれません。どんなお話をしようか、考えているところです。

研究会の主催者の方とのやり取りのなかで、業務マニュアルの本質に関わることが出てきています。ご紹介しながら、業務マニュアルについて簡単にお話して見たいと思います。まず、マニュアルという言葉が問題になりました。

<マニュアル通りにやるという言葉が、日本では悪い意味に取られていましたが>…というご指摘がありました。その通りです。今でも、あまりよい印象はないはずです。ただし、日本に限ったことではありません。

ピーター・ドラッカーが『経営者の条件』(1966年出版)で、肉体労働はもうダメだろう…と書いています。肉体労働とは原文では、manual work になっています。なぜ、マニュアル・ワークがもうダメなのか。社会から尊敬されないからという理由です。

社会から尊重され、尊敬されない仕事は廃れていきます。マニュアル通りの仕事は、1960年代には、尊敬されなくなっていたのでしょう。しかし、実際に仕事をするときに、マニュアルがないと困ることがあります。マニュアルは必要なようです。

 

2 標準化と業務マニュアル

では、なぜマニュアル通りの仕事が、尊敬されない悪い印象をもたれるようになってしまったのでしょうか。ひとことで言うと、人間性に反するからということでしょう。単純な反復作業を継続して行うことは、人間にとって愉快ではありません。

かつての業務マニュアルは、作業手順をきめて、その通りにやるようにという標準化の記述で塗りつぶされていました。標準化手順を守らせるのが、マニュアル・ワークだとしたら、マニュアルは、人間性に合いませんから、悪い意味になります。

サイバネティックスを提唱したウイナーが『人間の人間的な使い方』(日本語の題名は『人間機械論』)で、標準化された仕事は機械に任せるべきだ主張したのは、当然のことでした。

単純な反復継続は、機械に向いています。人間に向いていません。人間に向かないことを無理やりやらされたら、嫌になります。これでは尊敬されません。標準化だけの業務マニュアルがよい意味になったら奇跡です。

<マニュアルがあるということは素晴らしいことで、ちゃんとしたマニュアルのある会社で働きたいと思わせるようなものができたら>…と主催者はおっしゃいます。そのためには、人間性に合った形式の業務マニュアルが必要なのです。

 

3 人間性に合致して、成果をもたらすもの

では、人間性にあった形式の業務マニュアルとは、どんなものでしょうか。自分の頭で考えることを求める形式の業務マニュアルです。それも、考えるときのノウハウがついた、フォローつきの形式のマニュアルであるべきです。

この会社で働くと、自分の能力が発揮され、実力がついてくるという風土なら、その会社で働きたいと思われることでしょう。そんな会社の仕事なら、尊敬されるはずです。その風土を仕組みにしておきたいものです。それを業務マニュアルに書いておくべきです。

業務マニュアルの再定義が必要です。多くの方が、日常の業務の手順をすべて書かなきゃいけないのか…と思って、マニュアル作成に挫折するのです。古いマニュアル概念にとらわれているからです。頭を使って考えながらする仕事のマニュアルが必要なのです。

自分の頭で考えて、すばらしい考えを出すための要件は何でしょうか。自由であることがまず必要でしょう。そのときの自由は無制限の自由ではなく、組織の目的に合致した条件が加わるはずです。この条件にそった上での自由ということになります。

よりよい仕事をするために、個人は努力し、組織は必要な環境を提供することが求められます。共存共栄という当たり前の姿になるだけです。小さな組織なら、業務マニュアルを文書に書かなくても何とかなるかもしれません。

文書がない場合でも、その組織にはルールがあります。実質的な業務マニュアルがあるということです。大きな組織になった場合には、それを文書に書いておく必要が出てきます。その一番大切な業務の部分は、手順だけではなくなっているはずです。

(1)その業務のスタートとゴールはどこであるのか、(2)そのプロセスで必要な条件は何か、(3)ゴール時点で求められる品質は何か、それだけの記述で業務が表現される業務領域もあるはずです。同時に、標準化が必要な業務領域もあるはずです。

業種によってバランスが違ってくるはずですが、しかし、標準化だけに傾いた業務マニュアルを持つ組織が尊敬されるはずありません。人間性に合致して、成果をもたらすものであるかどうか、これが業務マニュアルを評価するときの判定基準になります。

ウィナーは、人間の強みを、あいまいな状況の中でかなり適切な判断をくだせる点にあると言っています。すべて決まりきった業務は、システムが代替できるようになります。人間ならではの業務が大切です。人間に業務マニュアルを合わせるしかありません。

 

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