■ビジネス文書の価値基準と文章の設計図

▼ビジネス文書:4つの価値基準

ドイツ参謀本部のメッケル少佐が日本に招聘されたとき、「軍隊のやりとりの文章は簡潔で的確でなければならない。日本語はそういう文章なのか」と言ったそうです。簡潔・的確というのは、現在のビジネス文でも必須の条件になっています。

伝わる文章とか、わかる文章という言い方があります。その実体は、「簡潔・的確」ということになります。簡潔であって、的確な表現で書かれた文章なら、わかるはずですし、伝わるでしょう。簡潔・的確にすることが大切です。

「簡潔・的確」であることは、どちらかというと形式的な基準です。これとは別にビジネス文の実質的な価値を決める基準がありそうです。「伝わる・わかる」に相当するものは、おそらく「成果をあげる」ということでしょう。

この成果をあげる文書というものの実体は、どういうものでしょうか。杉浦和史はシステム構築のプロジェクトリーダーとして圧倒的な成果を上げ続けています。この人のリーダー人選の基準は、問いかけに対する「スピードと内容」だそうです。

まさにビジネス文書の価値基準になります。「スピード」と「内容」が大切です。ここでいう内容というのは、実際の成果につながったかどうかということです。その内容をすばやく提示しなくては価値が落ちてしまいます。

 

▼文章の設計図:3つの条件

文章を書くということは、その人の考えをもとに文章を設計することです。たとえば梅棹忠夫は、自分の文章について、「要するに一種の設計図みたいなもの」という言い方をしています。

設計図にそって建築物を作った場合、われわれは、それをどう評価するでしょうか。おそらく、「デザインがよいか、安全な構造になっているか、工期が適切か、住み心地がよいか」…こうした点が問題になるだろうと思います。文書も同じです。

清水幾太郎も「私は文章は一種の建築物であるという信念を持っているのです」という言い方をしています。『私の文章作法』で、設計図を作るための3つの条件を提示しています。

(1) 文章を書き始める前に完成形がイメージできるようにしておく。
(2) 文章に必要な材料を事前に用意しておく。
(3) 材料を並べる順番を決定しておく。

これはいわゆる論文の書き方に近いものです。実際、ビジネス文書の書き方は、論文の書き方に通じます。こうした設計図を作ろうとすると、自分の不十分な点が見えてきます。設計図を作る最大の意味は、こうした自己検証が可能になる点にあります。

「簡潔・的確」で、「スピードと内容」が伴っているか、自己検証する必要があります。

 

▼設計図を作る効果

設計図を作るとき、紙に必要な材料を並べていきます。それを見ながら、不足を確認します。どういう並べ方にするか、全体がどういう構造になっていたらよいのかを考えていきます。その作業を繰り返すことで、よい設計図が作れるようになります。

論文を書く場合、大変苦労します。清水幾太郎は、こうした苦労の様子を一筆書きのようにさらりと紹介しています。最初から、一回できれいな設計図はかけないということが、よくわかります。

設計図を作るのは大変なエネルギーを必要とする仕事で、少し大きな論文の場合、設計図を作るだけで痩せてしまいます。と申しますのは、この仕事の途中、自分の主張が動揺し始めたり、要するに、大小の苦労が絶えないためで、逆に申しますと、自分の思索が本当に綿密になるのは、この段階であるとも言えるのです。

最後の一文を大切にしたいと思います。設計図を作ることによって、自分の考えが綿密になるのです。「簡潔・的確」になるのです。そして、この訓練を重ねることによって、「スピード・内容」が伴ってきます。

 

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