■ビジネス文書の書き方 1:基礎編

▼内容を決めるのは概念の明晰さ

ビジネス文書の価値を決めるのは、内容です。ですから、きちんとした内容を記述することが、ビジネス文書を書くときの第一の条件になります。その前提条件は、概念が明晰であるということです。

哲学者がしばしば言語をもとに哲学を組み立てているように、概念の明晰さというのは、文章の明晰さと表裏一体の関係にあります。かつて文章の研修を依頼されたとき、文章でその人の業務能力がわかりますか、と聞かれたことがあります。もちろん、わかります。

明晰な文章が書けなかったら、きちんとした仕事ができないでしょう。作文を見れば、文章のレベルだけでなく、思考の明確性までわかります。こちらのコメントを読んで、ここまでわかってしまいますか、と依頼主は戸惑っていました。

 

▼文章の評価基準:的確さ

以下、ビジネス文書の書き方について、基本とすべきことを記しておきます。まず文章の評価の仕方についてお話します。多くの場合、文章の評価をするとき、正しいとか、おかしいという基準で評価しがちです。

ところが正しいのか正しくないのかは、一概に決められません。問題は的確さです。正しい文でも、的確でない文はたくさんあります。大切なことは、話すように書いてはいけないということです。いったん頭の中で論理のフィルターを通す必要があります。

そんなに厳密なお話ではありません。明晰な概念で伝えようという意識を持っているかどうかなのです。斬新な発想のアイデアなら、簡単には伝わらないはずです。その場合、伝えるためにひと工夫するはずです。自分の考えを、正確に伝えたいと意識するはずです。

よく言われる「と」の使い方でも、正しさによる評価でなく、的確さでの評価というべきでしょう。こんな例です。「昨日、田中さんと吉田さんへの連絡方法について、検討しました」。会話なら、おかしな言い方ではありません。

しかし、ビジネス文書ではダメだという例です。筆者が、田中さんと検討したことを明確にしようとしたなら、「昨日、吉田さんへの連絡方法について、田中さんと検討しました」という風になるはずです。この程度のことは、前提条件だろうと思います。

 

▼ビジネス文書の書き方の基本中の基本

日本語の論理性の基礎となるのは、おもに主述関係にあります。述語を含んだ何かを述べる部分(述部)に対応した主体があるとき、日本語は論理性の基礎をもつことになります。ビジネス文書では、この論理の基礎を備えていることが大切になります。

日本語には主述関係がない、という主張もあります。主述関係がないと言う人は、日本語には主語がないと言います。ここで言われる主語は、私の言う主体とあまり違いません。ただ主語という概念が不明確なため、私は主体という言い方を採用しています。

「象は鼻が長い」という文章がよく問題になりました。主語は「象」なのか、「鼻」なのか、という話をお聞きになったことがあるかもしれません。間違った文章ではありませんが、拙い文です。「ゾウさんは、鼻が長いね」などと、いかにも子供が言いそうです。

まさに話すままの文章です。主述関係のない形式は的確な表現が困難になりがちです。述語が「長い」なら、その主体は「象の鼻」になるはずです。「象の鼻は長い」が標準的でしょう。あるいは「象」が主体なら、「象は、鼻の長い動物です」とすべきです。

主語は文章を書くときたてるものであって、日本語が主語をあまり使わないという話とは全然別のことです。主語は、自分がこの文章を書くときに、これが主語であるとたてなければいけないものであって、それがないから論理的に書けないというのは、自分の思考法が悪いんや。

上記の発言は、斬新な発想で多数の著述のある梅棹忠夫が『梅棹忠夫語る』で語ったものです。ビジネス文書の書き方の基本中の基本が、ここに語られています。文章がおかしかったら、思考法に問題があると考えられます。

概念を明晰に表現することが、ビジネス文書の基礎になるのです。 
(2 「王道は検証可能な形式」
)につづく。

 

 

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