■ビジネス文書の書き方 4:体系化の手法

▼ビジネスに体系化が必要な理由

ビジネス文には、簡潔性とともに体系性が必要です。組織の目的達成のために自社の目的・使命という「自説中心」の簡潔さが原則になります。しかし、それだけでは足りません。なぜ体系性が必要なのか、そのへんから考えてみたいと思います。

経験の二重性を指摘したウィリアム・ジェームズの考えを受けて、デューイは『思考の方法』(1933年改訂版)で、検証可能な形式を得るための「五段階説」を唱えています。しかし、デューイの前提とする考えを見ると、ビジネスに使えないことがわかります。

我々が直接働きかけたり享受したりする素材は複雑に組織されていて、知的な指示や証拠として役立つにはあまりにも不向きである。(中略)そうした錯綜をなくすために、それをできる限り、もはや他に還元できない数多くの独立の要素へと分解することが、当面生じた状況が指示する事柄を正確に示唆する唯一の方法である。『経験と自然』1925年

要素に分解してしまっては、全体像が見えません。ビジネスは、たくさんの業務がチェーンのように連なって形成される複雑な形態です。全体像を把握しながら、業務を検証していく必要があります。各業務の関連性を見ながら、体系化することが必要になります。

 

▼具体的な事象や要素を重視する

ビジネスには、目的達成のためのビジョンが必要です。それに基づいて、具体的な仕組みが決められます。ビジネス文書は、業務の成果をあげるために存在し、具体策が求められます。全体を見ながら、個別具体的な方策を示すために体系化が必要となります。

では、どうやって体系化していったらよいのでしょうか。ビジネスの世界でも、『アイデアのつくり方』でヤングが言う通り、「既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く」ために、「事物の関連性を見つけ出す」ことが必要になります。

実務で成果をあげている人たちを見ると、具体的な事象や要素の重要性に気づき、そこから、全体を構築していっていることがわかります。学問の世界でも同じなのかもしれません。内田義彦は、『社会認識の歩み』で言います。

≪体系に埋まっている断片をあえて掘り起こすという作業をしなければ、体系的に理解したとはいえません≫、≪体系感覚が育ってゆくためにも、まず断片をこの目でとらえることが必要だ≫…と。具体的な事象、断片をしっかり見ることが、体系を見出すことにつながりそうです。

 

▼体系化の手法

断片の重要性を感じ取るには、アンテナを張る必要があるでしょう。これに加えて、もう少し具体的な方法をご紹介します。主に業務マニュアルを作る際、全体の体系を見出すために、私が使っている手法です。数を多く出して、組み合わせる手法とやや異なります。

しばしばビジネスで使われるのが、TPOだろうと思います。「~をする」ということが明確になっている場合、組み合わせの基本となる3つの要素「いつ・どこで・どんな場合に」を一単位にまとめます。これを私は「セット型」と呼んでいます。

これとは別な要素の組み合わせ手法に、「メニュー型」があります。料理屋さんのメニューを見れば、イタリアンなのか中華なのか、すぐにわかるはずです。同等で同列に当たるものをまとめるものです。たとえば確認作業の、チェックリストなどにも使えます。

ドラッカーは、イノベーションを生みだす「7つの機会」があると主張しました。私からすると、メニュー型で同類・同列をまとめたものを、重要度順に並べたものだ、ということになります。これは体系化というより、体系化に向けたまとめになります。

その先に「レシピ型」があります。料理を作る手順のように、仕組みを作るものです。これは体系化といえます。大切なことは、スタートとゴールを決めることです。初めと終わりの枠組みを作り、ビジネスの各プロセスを並べてルートを作るものです。

時間軸より、ゴールに達する最適なルートを構築することが優先されます。BPRの手法と同じものです。目的を設定し、最適のプロセスを考えることがBPR(業務構築)ですから。こうした業務の仕組みを組み合わせて、巨大な業務のチェーンが出来上がります。

ビジネス文書の体系化とは、ビジネスの体系化でもあります。体系化された全体の仕組みが、ビジネスモデルです。業務マニュアルとは、ビジネス文書の究極の形です。それをまとめる手法は、ビジネス文書全般をまとめる際に、参考になるだろうと思います。

 

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