■まとめ:「は」と「が」をめぐって

▼高さんの4つのルール

外国語として日本語を学んだ高さんが、どういうふうに「は」と「が」を使い分けているのか。そのルールは非常に興味深いものでした。つぎつぎ思いつくことが出てきます。ご本人によると、4つのルールと勘で、使い分けをしているということでした。

高さんの4つのルールを上げておきます。

(1) 能力や意思を表したい場合、主題の後に「が」が来る
(2) 主題(主格)を強調する場合、主題(主格)の後に「が」を使う
(3) 言葉の中に小さい言葉がある場合(二つの言葉に主従関係ある場合)言葉全体の主題の後に「は」が来る
(4) 2つの並列言葉に主従関係ない場合、どちらの主題の後にも「は」が来る

このブログでは、上記のルールに8回にわたってコメントをつけてきました。

 

▼追加のルール

勘といっても、やはり裏づけがあります。高さんの場合、繰り返すうちに、意識しなくても使い分けができるようになっているものがあるのだろうと思います。追加すべき代表的なルールをあげておきます。

まず、存在を表す文の主体には「が」がつきます。「公園にベンチがある」「水槽に亀がいる」などです。「ある・いる」を「存在する」と言い換えて通じる文です。

また、疑問詞の前には「は」がつきます。「出発は何時ですか」「あの方はどなたですか」「問題は何でしょうか」などです。

高さんが「勘」と言うとき、どちらが正しいのかわかるけれども、ルールとして説明しにくい、というニュアンスがあるように思いました。

 

▼ストロングとウィーク

高さんが、文法の用語を自分流に使っていることも、興味深く感じました。とくに「主題」という用語を自由奔放に使いこなしているのが痛快です。「主題」という概念は濫用されている気がします。文法用語として、明確で的確な概念なのでしょうか。

言語学において、「主題」とは「Topic」だということです。日本語において、主題とは、助詞「は」がつくものだと説明されています。主題には「は」がつきます、「は」がつくものが主題です…という説明は、困ります。

高さんのルールにコメントをつけるときに、主題という言葉を使わずに説明しました。主題という概念を使う必要がないためでした。文法用語のなかには、実際の読み書きに役立たない用語が、かなりあるように思います。

実際に日本語を使って仕事をするときに、高さんが、自分流の意味をこめて「主題」という用語を使っているのをみると、当然のことだという気がします。ハロルド・ブルームは、ストロングとウィークという言い方をしていました。

ルールを考えるとき、実際に自分が使えなくてはなりません。使えるようにするために、どうしても実態にあうように読み替えが起こります。誤読といえば誤読です。文法書の言うことを正確に読むことよりも、実際に使えることを重視する立場であるといえます。

ハロルド・ブルームは、正確にテキストをなぞろうとする人を「ウィーク」と呼び、読み替えをしながら自分で考える人を「ストロング」と呼んでいます。高さんは、ストロングな学習者であるということでしょう。

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