■できる人の文章訓練:グローバル時代の文章日本語

▼自分の文章が世界に通用するか

先日、操作マニュアル作成講座を行いました。そのとき文章について、わずかな時間で触れました。6時間のうちの30分か、せいぜい40分でした。ところが、たくさんの方がアンケートに、文章について話した部分のことをお書きになっていました。

どういう基準で書いたらよいのかわからないので、参考になったというのがほとんどのコメントです。ただ、数十分ですから、そのサワリしかお話できませんでした。それでも参考になる点があった、とおっしゃっていただけるのはうれしいことです。

マニュアルに限らず、文書を書くときの基礎は文章です。仕事のレベルが一定水準を超えてきたら、間違いなく文章を気にしはじめます。受講される方は勝ち組企業の方がほとんどですから、自分の文章が世界で通用するのか、漠然と意識している方もかなりいるはずです。

社内言語を英語にして、グローバルな競争に立ち向かおうとする企業も出てきています。海外の優秀な方と一緒に仕事するには、社内言語を英語にするというのも、一つの考えだろうと思います。

しかし、こうした方針が、日本企業で主流になるとは思えません。あくまでも日本語をお使いになるでしょう。そのとき、文章表現が簡潔で的確であること、その内容が世界で通用するということが問題となるはずです。

 

▼内容は仕事の質で決まる

文章の内容は、仕事の能力に大きく依存します。どうしたら内容のある文章が書けるかという問題は、どうしたら質のよい仕事ができるかということと同じでしょう。ビジネス文書の場合、とくに文章の内容は、仕事の質によって決まります。

逆も同じです。明確、的確な文章が書けない人は、きちんとした仕事ができないということでもあります。何を言っているのかわからない人が、きっちりした仕事をすることは、例外だと考えるべきでしょう。

ときどき優秀な人が、文章を書かないということはあります。訓練をしていなかったため、どう書いたらよいのかわからないということです。こういう方の場合、訓練する必要があります。

これは有名なお話ですが、西堀栄三郎という偉大な学者がいました。日本のコンサルタントの草分けのような方です。「雪山賛歌」の作曲者とも言われています。この方が文章を書くのが苦手で、困っていたそうです。

 

▼書くことに先立って読むこと

西堀栄三郎の『南極越冬記』は、1958年、南極越冬を終えたあとに書かれた名著です。いまにいたるまで、たくさんの方に読まれています。よい文章です。書けないと言っていた人が、どうやって書けるようになったのか、なかなか興味深いことです。

西堀は理学博士ですから、専門分野の論文は書けたのです。ところが一般向けの文章を書くのが苦手だったのです。そのとき友人の桑原武夫から、週刊誌を読むように言われたそうです。昭和30年代初めの頃、週刊誌の文章は、かなりきっちりした文章で書かれていたようです。

一般の人向けに、きちんと書かれた文章を読むうちに、西堀は書けるようになったのです。もともと書くべき内容はありました。南極に対する思いが強くて、越冬を主張した中心人物です。その人が、書き方を身につけたのです。

まず書くことに先だって、読むことが必要でした。それだけでなく、書くことを意識しながら読んでいったことが、よかったのだろうと思います。まったく書けなかった人が、突然書き出して、たくさんの本を書く例はよくあります。

たいていの場合、書く必要に迫られています。書くつもりで、お手本の文章を一定期間読んだケースが多いようです。たくさん読むことも大切ですが、書くつもりで、自分のよいと思う文章を読むことは、効果があると思います。

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